「サービタイゼーション」とは?製造業が選ばれ続ける企業になるための新戦略
更新日 : 2025年06月02日
現代の製造業では、顧客に選ばれ続ける企業になるための新戦略として「サービタイゼーション」という概念が注目を集めています。製品とサービスを融合させることで、従来にはない価値を提供し、持続的な競争優位性を構築する取り組みです。
今回の記事では、サービタイゼーションの基礎知識から取り組むメリット、留意点まで詳しく解説します。
サービタイゼーションとは
サービタイゼーションとは、モノ(製品)に「サービス」をプラスして新しい価値を生み出すビジネス戦略です。従来のような製品の販売で完結していたビジネスモデルから脱却し、製品を軸としながらも包括的なサービスを組み合わせることで、顧客に対してより大きな価値を提供する取り組みを指します。具体的には、製品の設計・製造・販売に加え、保守・メンテナンス、運用支援、データ分析、トラブルシューティングなど、単なる製品販売を超えた総合的なソリューションを顧客に届けます。
近年では、IoTやAI(人工知能)、クラウドといったデジタル技術の発達により、従来では実現困難だった高度なサービスも可能になっています。
「サービタイゼーション」が注目されている理由
サービタイゼーションが注目されている理由としては、以下が挙げられます。
「コモディティ化」が起きているため
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サービタイゼーションが注目される最大の理由は、製造業において深刻な「コモディティ化」が進行していることです。コモディティ化とは、製品の機能や品質が競合他社と差別化できないがために、価格競争となってしまう現象を指します。以下に、コモディティ化が進行する背景をご紹介します。 |
技術の進歩
現代では技術の進歩が著しく、多くの企業が高度な技術を活用して製品を製造することが可能となっています。技術の標準化や品質管理の最適化、さらには製造設備の高度化により、以前は一部の企業だけが実現できていた高品質な製品も、多くの企業が製造可能となりました。結果として、製品そのもので差別化を図ることが困難になりつつあります。
供給過多による低価格化
市場には類似した性能を持つ製品が数多く存在し、供給過多の状況が生まれています。これにより、企業間では激しい価格競争が展開されることとなり、利益率の低下や事業の持続可能性に関する課題が発生しています。製品単体での差別化が困難な状況では、価格以外の競争軸を見つけることが企業存続の鍵となっています。
海外企業の参入
グローバル化の進展により、低コストで製造された海外製品が国内市場に参入するケースが増加しています。海外製品が国内製品と同等の性能かつ低価格で提供される場合、顧客は価格を重視して海外製品を選択する傾向があります。結果として、国内企業も価格競争に巻き込まれ、コモディティ化が加速する要因となっています。
情報社会による影響
インターネットの普及によって価格比較サイトやレビューサイト、SNSなどから製品情報を入手しやすくなり、顧客は複数の製品を容易に比較検討できるようになりました。顧客にとって利便性が高まった一方、価格重視で製品を選びやすい傾向となっています。
IoTやAIの技術が進み、新しいサービスが提供しやすくなったため
近年ではIoTやAI技術の急速な発達により、従来は実現が困難だった高度なサービスを提供できる環境が整っています。リアルタイムでのデータ収集、分析、予知保全、顧客のニーズに合わせた提案・コンサルティングなど、サービタイゼーションの実現可能性を高めています。
顧客の求めるものが「モノ」から「コト(体験)」へ変化しているため
現代の顧客にとって重要なのは、単に製品を所有することではなく、製品を通じて得られる体験や成果を重視することに変化しています。製品を活用することで実現できる業務効率化、コスト削減、競争力向上といった、具体的なメリットに関心を持つ顧客が増加しています。顧客の求める価値に対応するには、購入後の支援やアフターサービスなどが不可欠となりつつある状況です。
サービタイゼーションに取り組むメリット
サービタイゼーションは、企業にいくつかのメリットをもたらすことが期待できます。以下に、サービタイゼーションに取り組むメリットをご紹介します。
価格競争からの脱却・利益の確保
サービタイゼーションに取り組む最大のメリットは、価格競争から脱却できる点です。顧客は製品とサービスの組み合わせを評価するため、独自の価値を提供することが非常に重要です。サービタイゼーションに取り組むことによって価格比較による競争を避け、適正な利益率を確保することが期待できます。
顧客との継続的な関係構築
サービタイゼーションは、顧客との長期的な関係構築にも非常に効果的です。定期的なメンテナンスや技術サポートなど、アフターサービスを通じて製品販売後も継続的にサービスを提供し、顧客との接点を維持することで、顧客エンゲージメントが強化されます。顧客との信頼関係は、リピート購入や他製品の提案、顧客の紹介による新規顧客獲得にもつながる重要な資産となります。
ブランド・ロイヤルティの向上
サービタイゼーションによる継続的な価値提供は、ブランドに対する顧客の信頼と愛着を深める効果が期待できます。質の高いサービス体験を通じて企業に対する信頼感が増すことで、価格競争に左右されない安定した顧客関係を構築できるようになります。結果として、ブランド・ロイヤルティの向上や収益安定化に貢献します。
企業の成長につながる
サービタイゼーションへの取り組みは、企業の持続的な成長に大きく貢献します。顧客接点の中で得られる情報やフィードバックは、新しい製品やサービスに反映させることが可能です。企業が新しい価値を生み出そうとする姿勢そのものが、企業全体の成長の促進につながるでしょう。
サービタイゼーションにおけるアフターサービスの重要性
サービタイゼーションにおいて、アフターサービスは非常に重要な要素の一つです。アフターサービスは顧客との継続的な接点を持つ部分となるため、質の高いサポートを提供することで、顧客満足度とロイヤルティを高めることができます。結果として、顧客の製品や企業に対する信頼感を向上させ、LTV(顧客生涯価値)の最大化に直結する効果が期待できます。
さらに現代では、IoTやAI技術の進化により、顧客ごとの製品の稼働データや使用状況データをリアルタイムで収集・分析することが可能です。これらの蓄積されたデータを活用することで、予知保全や顧客ニーズに基づいた最適な提案など、従来のアフターサービスでは実現困難だった高付加価値サービスを提供できるようになりました。アフターサービスの充実は、サービタイゼーションの成功における重要な鍵といえるでしょう。
サービタイゼーション推進における3つの留意点
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サービタイゼーションを推進するためには、しっかりとした戦略設計と実行が重要となります。ここからは、特に重要とされる3つの留意点について解説します。 |
既存顧客との関係性の再定義
サービタイゼーションを推進する際には、既存顧客との関係性を再定義する必要があります。従来の製品販売を目的とした取引から、サービタイゼーションでは継続的な価値の提供へとビジネスモデルが大きく変化します。これにより、顧客との接点の持ち方も変わることを踏まえて製品説明やサポート体制を見直し、より顧客との信頼関係を深めることが重要です。
技術を持つ人材の確保と育成
サービタイゼーション推進には、新しいサービスを開発するにあたって幅広い領域のスキルを持った人材が必要となります。特にIoT技術やAIの活用、データ分析など、顧客に価値のあるサービスを提供する人材の確保と育成が欠かせません。既存の従業員の教育・研修や採用活動により、社内の技術力向上を図る人材戦略が成功の鍵となります。
継続的なサービス運用体制の維持
サービタイゼーションでは、製品販売後も安定的にサービスを提供し続けることが重要なため、継続的なサービス運用体制の維持が不可欠です。特にアフターサービスを充実させるには、24時間365日体制での対応、全国展開でのサービス提供、迅速な問題解決など、多くのリソースが必要となります。人手不足やリソース確保に障壁を感じている場合は、アフターサービスの代行サービスなどを利用するのも有効な選択肢です。
まとめ
サービタイゼーションは、製造業が直面しやすいコモディティ化の課題を解決し、自社にしかない価値を提供することで長期的な関係を構築する重要な要素です。顧客の期待が「モノ」から「コト」へ変化している現在、サービタイゼーションの成功に注力することが、選ばれ続ける企業となるための有効な戦略といえます。
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