
実在する社長や役員になりすました詐欺メールは広く知られるようになりました。しかし近年は、攻撃者がメールだけでなくMicrosoft Teamsなどのビジネスチャットを悪用するケースも確認されています。
Teamsは日常業務で頻繁に利用されるため、「Teamsなら安全」「チャット相手は社内の人だろう」と無意識に信頼してしまう利用者も少なくありません。
攻撃者はこうした心理につけ込み、社長や役員になりすまして情報を聞き出そうとします。
本記事では、実際に発生したTeamsのなりすまし事例と、情報システム担当者が実施すべき対策について解説します。
Teamsで発生した社長なりすまし詐欺の事例
ある企業で、Microsoft Teams上に社長と同じ表示名を利用した外部アカウントからチャットが届きました。本記事に掲載しているチャット画面は事例をもとに再現したイメージです。実際の攻撃では表示名やメッセージ内容が異なる場合があります。
外部ユーザーからチャットが届く

最初のメッセージでは、「こちらは取引先との連絡専用のTeamsアカウントです。今後のやり取りのために登録をお願いします。」と案内されていました。
取引先連絡用アカウントを装って接触

その後、攻撃者は社長を装ったまま、
- 役員や管理職のメールアドレス
- Teamsアカウントや連絡先情報
- 社内の組織情報や担当者情報
などを要求してきました。
組織情報や連絡先情報を要求

社員は途中で違和感を覚え、別の連絡手段で社長本人へ確認を試みました。本人と連絡が取れなかったため、セキュリティ窓口へ相談したことで被害を未然に防ぐことができたとのことです。
Teamsなりすまし詐欺とは
Teamsのなりすまし詐欺は、ビジネスメール詐欺(BEC:Business Email Compromise)の手口をTeams上で悪用した攻撃といえます。
- ビジネスメール詐欺(BEC)の基本的な手口や被害事例については、以下の記事で詳しく解説しています。
- 社長・役員になりすました詐欺メールに注意|ビジネスメール詐欺の手口と対策
BECとは、経営者や取引先になりすまして従業員を騙し、送金や機密情報の提供を促すサイバー攻撃のことです。攻撃者は、Microsoft 365テナントや外部組織のTeams環境を利用し、自社の社長や役員と同じ表示名を設定したアカウントで接触を試みます。そしてTeamsの「外部アクセス」機能を利用して従業員へ接触します。Teamsの外部アクセスは、他社ユーザーとのチャットや通話を可能にする標準機能です。
- Teamsの基本機能や活用方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
- Microsoft Teamsとは?機能・使い方・活用方法をまとめて解説
攻撃者の目的は、
- 機密情報の窃取
- 資金送金の指示
- アカウント情報の取得
- マルウェア感染
などです。Microsoftも近年、外部チャットを利用したなりすまし攻撃やフィッシング攻撃について注意喚起しています。
なぜTeamsなりすまし詐欺は成功してしまうのか
メールによるなりすまし詐欺には警戒していても、なぜTeamsなりすまし詐欺にはだまされてしまうのでしょうか。いくつかの要因が考えられます。
Teamsは安全だと思い込んでしまう
「Teamsで連絡してくるのだから社内の人だろう」という先入観から、メールには強く警戒する人もTeamsのチャットには警戒心が薄くなりがちです。送信者確認をせずに返信してしまうケースがあります。
社長や役員とは普段やり取りしない
普段接点が少ない役員から突然メッセージが届いても、本人の文体を知らないため違和感に気付きにくい場合があります。特に、
- 急ぎの依頼
- 秘密案件
- 支払い依頼
などの要素がメッセージに含まれていると、受信者が違和感を感じても周りに相談せずに遂行してしまう可能性が高く、注意が必要です。
「外部ユーザー」表示だけでは判断できない
Teamsでは組織外ユーザーとチャットすると「外部」表示が付くことがあります。しかし、
- グループ会社
- 協力会社
- 委託先
との日常的なやり取りがある企業では、外部ユーザー表示自体は珍しくありません。そのため、「外部」と表記されていても特に違和感を感じずやり取りをしてしまう可能性があります。
緊急性を演出して判断を急がせる
なりすまし攻撃では、
- 至急対応してほしい
- 他の人には相談しないでほしい
- 今すぐ送ってほしい
といった形で緊急性を強調するケースがあります。冷静な確認を行わせないことも攻撃者の目的の一つです。
情報システム担当者が実施したい対策
1. Teamsなりすまし攻撃の周知
まずは従業員に、
- Teamsでもフィッシングが発生する
- 社長や役員を装うケースがある
- Teamsだから安全とは限らない
ことを定期的に周知しましょう。
2. Teams外部アクセスの見直し
Teamsでは外部アクセスを組織単位またはユーザー単位で制御できます。情報システム部門担当者は定期的に設定状況を確認し、外部ユーザーとのコミュニケーション範囲を適切に管理することが重要です。見直しのポイントとしては以下が挙げられます。
- 業務上不要な外部アクセスの無効化
- 信頼する取引先やグループ会社のドメインのみに外部アクセスを限定
- ゲストアクセスの設定状況および不要なゲストアカウントの見直し
- 共有チャネルを含む外部コラボレーション機能の利用方針の整備
また、なりすまし攻撃のリスクを下げるためには、「業務上接点のない外部ユーザーから自由にチャットを開始できる状態」になっていないか、定期的に設定を確認することも重要です。
- Teamsの全体像や運用方法について確認したい方は、こちらの記事も参考にしてください。
- Microsoft Teamsとは?機能・使い方・活用方法をまとめて解説
3. セキュリティ相談窓口・インシデント対応体制の整備
なりすまし攻撃は完全に防げるものではありません。そのため、
- 不審なチャットをすぐ相談できる窓口
- インシデント受付体制
- 初動対応フロー
を整備することが重要です。
従業員が取るべき行動
1. 送信者情報を必ず確認する
Teamsのチャットを受信した際は、
- 表示名
- メールアドレス
- 所属組織
- 過去のやり取り履歴
を確認しましょう。Microsoftも、外部からのチャットについて送信者の情報を十分確認し、信頼できる相手とのみやり取りを行うよう案内しています。
2. 不審な場合は別経路で本人確認する
社長や役員からの依頼であっても、電話や社内チャット、既知のメールアドレスなど、別の連絡手段で本人確認を行うことが重要です。自分から直接連絡しづらい場合は、上司や秘書、情報システム部門を通じて確認を依頼しましょう。
3. 少しでも違和感があればすぐに相談する
最も有効な対策は、「おかしいと思ったらすぐ相談する」ことです。少しでも違和感を覚えた場合は、情報システム部門やセキュリティ窓口へ速やかに相談しましょう。実際、多くの被害は相談の遅れによって拡大しています。
まとめ
Teamsのなりすまし詐欺は、メールによるフィッシング攻撃と比べて利用者の警戒心が低くなりやすく、被害につながるリスクがあります。
特に、社長や役員になりすました攻撃は実在の人物を装うため発見が難しく、従業員教育だけでなくMicrosoft Teamsの設定見直しやインシデント対応体制の整備が重要です。
また、なりすまし攻撃は技術的な対策だけで完全に防げるものではありません。従業員が「怪しい」と感じた際に、すぐ相談できる体制を整備しておくことが被害防止につながります。
「不審なチャットを受け取ったが判断できない」「セキュリティ相談窓口がない」「インシデント発生時の初動対応に不安がある」といった課題はありませんか?
JBサービス株式会社では、Microsoft TeamsをはじめとしたMicrosoft製品の導入・運用支援に加え、不審なチャットを受信した際の相談受付やセキュリティインシデント発生時の初動対応支援をご提供しています。
Teamsのなりすまし対策やセキュリティインシデント発生時の運用体制の見直しをご検討の際は、お気軽にご相談ください。