
日々、社員が利用するPCは業務に欠かせないものであると同時に、情報漏えいのリスクがつきまといます。特にPCの紛失や不適切な廃棄による情報漏えいは、企業の信用を根本から揺るがす重大なインシデントに直結するため、適切な管理体制の構築が不可欠です。
本記事では、PCの紛失・廃棄時に潜む具体的なリスクを再確認し、情シスが今すぐ取り組むべき解決策について解説します。
会社のPCの紛失や不適切な廃棄によるリスクとは?
社用PCの紛失や不適切な廃棄は、単なる物理的損失ではなく、企業の信用問題に関わる深刻なリスクに直結します。以下では、具体的なリスクについて詳しく見ていきます。
機密情報・個人情報の「直接漏えい」
社用PCを紛失した場合、第三者の手に渡ることで、PCに保存されている膨大な営業機密や顧客データが盗まれる危険があります。廃棄時も、OSの初期化やフォーマットだけではデータが復元可能で、個人情報や財務情報が抜き取られるおそれがあります。専門の復元ツールを使えば簡単にデータを復活できるため、表面的な消去では十分な対策とはいえません。
個人情報保護法違反による「法的ペナルティ」
個人情報が漏えいした場合、個人情報保護委員会への報告と本人への通知が義務付けられています。対応の遅れや管理体制の不備は、行政指導や罰則・罰金の対象です。さらに、命令違反や虚偽の報告などがあれば、企業や責任者に罰金が科される可能性もあります。個人情報の不適切な管理は社会的信用を失い、企業価値を大きく損なう重大なリスクとなります。
サプライチェーンから「除外される」リスク
セキュリティ体制が不十分な企業は取引先から敬遠され、既存取引の打ち切りや新規取引停止といった経営リスクを招きます。特に大手企業はセキュリティ体制への審査が厳格で、重大な情報漏えいを起こした企業はサプライチェーンから排除される可能性が高まります。サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度も、セキュリティ要件の重要性を一層高めているといえます。
サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度とは
経済産業省が推進する「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」は、企業が取引先のセキュリティ対策を客観的に評価する仕組みです。取引先が原因となる情報漏えいやサイバーリスクの低減、サプライチェーン全体のセキュリティ強化を目的としています。組織ガバナンス、インシデント対応、PCを含む資産管理など、多面的な評価項目が設定されており、認証取得により自社のセキュリティレベルを示し、ビジネス上の信頼性を高めることができます。
これらのリスクを回避するために情シスが行うべき対策
![]() |
前述のリスクを回避するためには、包括的なPC管理体制を構築する必要があります。ここからは、情シスが実施すべき具体的な対策について解説します。 |
社用PCの紛失時の対策
PC紛失時は、いかに迅速に対応できるかが重要です。技術的対策と運用的対策の両面から、被害の拡大を最小限に抑える方法を見ていきましょう。
技術的対策
MDM(モバイルデバイス管理)によるリモートワイプの徹底が不可欠です。紛失が報告された時点で、遠隔操作でPC内のデータを完全に消去できる仕組みを導入することにより、第三者の不正アクセスを防止できます。VDI(仮想デスクトップ)やシンクライアント化で、PC本体にデータを残さない設計を採用することも有効です。さらに暗号化技術を導入し、ハードディスク全体を暗号化しておくことで、万が一PCが盗まれた場合でもデータの解読を困難にします。
運用的対策
PC紛失時に、社員がすぐに連絡できる24時間365日対応のヘルプデスク窓口を設置することが重要です。早朝・深夜や休日でも、迅速に対応できる体制を整えておくことで被害の拡大を防げます。また、定期的なセキュリティ研修を通じてPC管理や緊急時の対応手順を周知し、紛失リスクと報告の重要性を徹底することが、組織全体のセキュリティレベル向上につながります。
社用PCの廃棄時の対策
廃棄時の対策として最も重要なのは、確実なデータ消去とPC管理台帳の徹底です。
確実なデータ抹消
PC廃棄時は、復元不可能な方法で確実にデータを完全消去することが必要です。「専用ソフトでデータを消去する」、ハードディスクを損傷させる「物理破壊」、強力な磁気でデータを消去する「磁気破壊」などの方法があります。
また、いずれの方法でも「データ消去証明書」を発行・保管しましょう。証明書は適切な手順でデータが消去されたことを証明する文書であり、万が一のトラブル発生時に企業の免責を示す重要な証拠となります。
資産管理の徹底
PCが「いつ調達され、誰が使用し、いつ廃棄予定か」を、資産管理台帳で一元管理することが重要です。台帳には、機器のシリアル番号、資産管理番号、購入日、使用者、配置場所、廃棄予定日などを記録します。台帳管理を徹底して実機の整合性を確認することで、廃棄漏れや所在不明のPCを早期に把握し、適切なライフサイクル管理が可能になります。クラウド型の管理システムを導入すれば、リアルタイムでの情報更新や複数拠点での一元管理も実現できます。
セキュリティ対策の「あるべき姿」と、情シスの「リソース不足」という現実
前章で解説した防御策は、セキュリティ対策での「あるべき姿」です。しかし、実際の中小企業の情シスが直面しているのは、深刻なリソース不足という課題です。多くの企業では情シス担当者が少人数で、PC管理以外にも多岐にわたる業務を兼任しています。日々の業務に追われる中で、キッティングからヘルプデスク、廃棄に至るまでのPC管理業務をすべて自社で完結させることは現実的ではありません。
PC管理を専門業者に任せるという選択肢
![]() |
リソース不足という課題に対する有効な解決策として、社用PCの調達から廃棄に至るまでの管理の一部、もしくは一連の流れを専門業者にアウトソーシングするという選択肢があります。専門業者は、PC管理に関する豊富な経験とノウハウを持ち、最新のセキュリティ技術や法規制にも精通しています。業務を委託することで、情シスは本来注力すべきコア業務に専念でき、同時に高度なセキュリティレベルを維持することが可能です。 |
PC管理のアウトソーシング化で解決できること
PC管理業務をアウトソーシングすることで、各フローにおいて以下のような具体的な解決が実現できます。
- 調達・導入フェーズ:PCの選定からキッティング作業、資産管理番号の貼り付けまでを一括して任せることが可能です。大量のPCを短期間で展開する場合も効率的に行えます。
- 運用・保守フェーズ:ヘルプデスク窓口や代替機の管理を委託可能です。社員からのPC紛失の連絡にも即時対応し、遠隔でのデータ消去などの緊急対応も実施できます。故障時の修理手配やトラブル発生時の技術サポートも含まれるため、社員は安心して業務に集中できます。
- データ消去・廃棄フェーズ:資産管理台帳と連動し、引退PCを漏れなく回収します。国際基準に準拠した確実なデータ抹消と、データ消去証明書の発行も実施されます。環境に配慮した廃棄処理やリサイクル対応も含まれる場合が多く、企業の社会的責任を果たすことにもつながります。
アウトソースを活用し、企業の「信頼」を守るセキュリティ体制の確立を
PCの紛失・廃棄によるリスクは、もはや情シスだけで対応できる問題ではなく、企業全体の経営リスクとなっています。情報漏えいはいつ発生するか分からないため、早期の対策が不可欠です。適切なPC管理体制を構築することは、単なるリスク回避にとどまらず、企業の信頼性向上やビジネス機会の拡大にもつながります。取引先から信頼されるセキュリティ体制を整備することで、新規取引の獲得や既存取引の深化が期待できます。
自社のリソースのみでは対応が難しい場合は、アウトソーシングを活用するのも有効です。専門業者の知見とサービスを活用することで、効率的かつ確実にセキュリティレベルを向上させることができます。
PC管理に関するご相談はJBサービスへ
アウトソーシングによってPC管理業務を外部委託することで、情シスは限られたリソースを本来の業務に集中させることができます。
JBサービスでは、PC調達から廃棄までの一連のライフサイクルを包括的にサポートするサービスをご提供しています。豊富な実績と専門知識を持つスタッフが、貴社の課題に合わせた最適なソリューションをご提案し、情シスの負担軽減と高度なセキュリティ体制の構築を実現します。
社用PCの管理に関するお悩みや課題を抱えている場合は、ぜひJBサービスまでお気軽にお問い合わせください。

