
「またパソコンが値上がりした」「PCパーツの調達コストが予算を圧迫している」――情報システム部門の担当者であれば、近年こうした悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
2020年代以降、PC・PCパーツの価格高騰は続いており、調達コストの増大は企業のIT予算を直撃しています。円安の進行、半導体不足、グローバルサプライチェーンの混乱など、複合的な要因が重なり合い、「いつまで値上がりが続くのか」という疑問に対する明確な答えはいまだ見えていません。
本記事では、PCおよびPCパーツの価格高騰の背景と今後の見通しを整理したうえで、情報システム部門が取り組むべき現実的な対応策について解説します。
1. なぜパソコン・PCパーツは値上がりしているのか
まず、PC・PCパーツが値上がりしている主な理由を整理します。情報システム部門として予算計画や調達戦略を立てるうえで、価格高騰の構造を理解することは不可欠です。
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円安の進行による輸入コストの上昇
PCおよびPCパーツのほとんどは海外で製造され、ドル建てで取引されます。2022年以降、円安が急速に進行し、一時1ドル150円を超える水準に達しました。その後やや円高方向に推移しているものの、歴史的にみれば依然として円安水準が続いており、輸入コストの高止まりが国内のPC価格を押し上げる要因となっています。円安が大幅に是正されない限り、国内市場でのPC価格への上昇圧力は続くと考えられます。
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半導体・電子部品の供給不足と需給逼迫
新型コロナウイルスの感染拡大(2020〜2021年)を契機とした半導体不足は、PC業界にも深刻な影響を与えました。CPU・GPU・メモリ・ストレージ(SSD/HDD)など、PCを構成する主要部品の供給が追いつかず、価格高騰を引き起こしました。現在は一部緩和されている品目もありますが、地政学的リスクや新たな需要増(AI向けGPU等)により、再び逼迫するリスクも残っています。
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物流コストの上昇と輸送遅延
コンテナ不足や燃料費高騰によって国際物流コストが増大し、PCパーツの最終価格に転嫁されています。
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メーカーによる相次ぐ値上げ
DELLやHPなど主要PCメーカーは2022〜2024年にかけて複数回の価格改定(値上げ)を実施しています。BTOパソコンも例外ではなく、カスタム構成のコストも上昇しています。ノートPCについては特に法人向けモデルで値上がりが顕著です。
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中古PC・中古パーツ市場への波及
新品PCの価格高騰に伴い、中古PC・中古パーツの需要も増加しています。中古市場でも値上がりが進んでおり、従来の「中古で安く調達する」という選択肢も取りにくくなっています。
2. PC価格高騰はいつまで続く?今後の見通し
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情報システム部門の担当者にとって最も気になる「いつまで値上がりが続くのか」という問いに対し、残念ながら明確な終息時期を断言することは難しい状況です。 以下の要因が継続している限り、PC・PCパーツの価格高止まりは続く可能性があります。 |
- 円安傾向の持続(日米金利差が縮小しない限り急激な円高への反転は見込みにくい)
- AI・データセンター投資の拡大による半導体需要の高止まり
- 地政学的リスク(台湾海峡情勢等)による半導体サプライチェーンへの不確実性
- エネルギーコスト高によるPC製造・輸送コストへの継続的影響
つまり、「いつかは下がるだろう」という受け身の姿勢でコスト削減を先送りすることは、企業・組織のIT予算運営として大きなリスクになりえます。
PC価格の高騰が構造的・中長期的な問題である以上、情報システム部門としては「調達コストを下げる工夫」と並行して、「既存PC資産を可能な限り長く使い続けるための仕組み」を整備することが急務です。
PCが故障した際、「壊れたらそのとき買い替えればいい」と考えている担当者の方もいるかもしれません。しかし、現在の調達環境ではそう簡単にはいかないケースが増えています。
まず納期の問題です。注文してもすぐに手元に届かず、その間は業務が止まってしまうリスクがあります。
さらに価格高騰の問題もあります。いざ購入しようとしたとき、部材コストの上昇によってPCの価格が想定を大きく上回り、従来と同じ予算では必要な台数を揃えられないという事態も起こりえます。
どちらのケースも、業務の停止や遅延につながる深刻なリスクです。「壊れてから考える」という姿勢を改め、計画的な調達・保守体制を今から整えておくことが重要です。
3. PC価格・パーツ高騰への対策
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PC価格・パーツ高騰への対策としては、下記の5つの施策が考えられます。どれか1つに絞るのではなく、業務への影響を考慮したうえで、複数を選択することも有効でしょう。 |
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PC調達戦略を見直す
実際の業務を棚卸しし、高性能PCが本当に必要な人を一部に絞るなど、調達戦略を見直しましょう。例えば開発や設計業務で使うPCは高スペックを維持する必要がありますが、オフィスソフト中心の部門に対しては、現在のスペックが過剰になっていないか見直す余地があります。全社員に一律のスペックを配布するのではなく、業務内容に応じた最適化を行うことが重要です。
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PCの標準化・機種統一を行う
1つ目の項目に関連して、業務の棚卸しを行ったうえで、PCスペックをある程度統一できる範囲については、機種や構成を部門ごとにばらばらにするのではなく、数種類の標準モデルに統一することが有効です。これにより、調達コストの削減が期待できる可能性があります。加えて、大量調達による単価低減だけでなく、キッティングや保守運用の効率化にもつながります。
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リース・サブスクリプションの活用を検討する
PCを一括購入するのではなく、リースやサブスクリプション型の調達を活用することで、初期費用の平準化が可能になります。特に価格高騰局面においては、コスト変動リスクの分散という観点でも期待できます。
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既存PCの延命(ライフサイクル延長)を図る
リプレース周期を見直し、現行の4年から5〜6年へ延長することも検討可能です。その際、SSDへの換装やメモリ増設など比較的低コストな対策により、体感性能を改善できます。すべてを新品に入れ替える前提を見直すことが重要です。
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クラウド活用による端末依存の低減
VDIやDaaSの導入、SaaSの活用を進めることで、端末側のスペック要件を引き下げることが期待できます。特に定型業務中心の部門では、低スペック端末でも業務遂行が可能となり、中長期的なコスト削減につながります。
なかでも、すぐに取り組める施策として特に注目されているのが4つ目の既存PCの延命です。次の章では、延命を進めるうえで押さえておくべき重要なポイントを解説します。
4. 既存PCの延命で実現するコスト最適化:押さえておくべきポイント
PC価格高騰への対策として注目されているのが、既存PCの延命です。ただし注意しなければいけないポイントがいくつかあります。
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メーカー保守の終了
保守期間が切れた端末は、万が一故障や不具合が発生した際に迅速な修理や部品交換が受けられず、結果として業務停止や生産性低下といった影響を招く可能性があります。
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OSのサポート状況
端末の動作として問題がないように見えたとしても、サポートが終了したOSしか稼働しないPCを使い続けることは、セキュリティリスクの観点から推奨されません。一方で、サポート対象のOSが動作する端末であれば、適切なハードウェア保守体制を整えることで、安全かつ継続的に運用することが可能です。
そのため、既存PCの延命や中古活用を前提とする場合には、ハードウェア保守サービスの併用を検討することが、安定したIT運用を実現するうえで重要なポイントとなります。
- JBサービス株式会社では、Lenovo製品のメーカー保守サービス終了予定の一覧をご用意しています。自社で利用しているPCがサポート終了対象かをご確認いただけます。
- 【Lenovo製品】メーカー保守サービス終了予定 2024年 一覧はこちら
- 【Lenovo製品】メーカー保守サービス終了予定 2025年 一覧はこちら
5. PC延命と合わせて検討したい第三者保守サービス
通常、PCのメーカー保証期間は購入から3〜5年程度です。この期間が終了すると、メーカー側は「保守サポートの終了(EOS)」を宣言し、有償保守でも高額な費用が発生するか、サポート自体を受け付けなくなります。
そこで活用されるのが第三者保守サービスです。第三者保守サービスは、メーカー保証期間終了後や、いわゆるEOL(End of Life)・EOS(End of Service)を迎えたPCについて、メーカー以外の保守サービス提供会社がハードウェア保守・修理・部品交換などのサポートを提供するサービスです。
メーカー保守終了後も引き続きハードウェアのサポートを受けられるため、PCの使用期間を延長し、リプレースコストを先送りしながらトータルの調達・運用コストを最適化できます。
第三者保守サービスの主なメリット
PCの延命対策で第三者保守サービスを利用する主なメリットをご紹介します。
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リプレースコストの削減・先送り
価格高騰が続くなかでのPC一斉リプレースを回避し、既存資産の稼働延長によってコストを抑制できます。調達予算の平準化や、次世代モデルへの計画的移行を実現します。
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メーカー保守が終了した後(EOL/EOS後)もサポートが受けられる
メーカーがサポートを終了したモデル(EOL機器)についても、第三者保守事業者が部品在庫や修理ノウハウを保持していれば継続サポートが可能です。急なリプレースによる業務中断リスクを低減できます。
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マルチベンダー・複数機種の一元管理
第三者保守サービスを提供する企業の対象サービスにもよりますが、複数メーカー・複数機種のPCが混在する環境でも、1社の第三者保守事業者にまとめて委託することができ、管理窓口の一本化による運用効率化が図れます。
6. 第三者保守サービス導入の流れ
第三者保守サービスの導入までの流れをご紹介します。
現行の保守契約・PC資産台帳を整理
業務で利用している端末について、機種・購入年・現行保守契約の終了日などを整理し、現状を把握します。
リプレースか延長保守をするか対象機器の特定
メーカーサポート終了(EOL/EOS)が予定されている機種を洗い出し、リプレース対象とするか、延長保守による継続利用が可能かを検討します。
サービス提供会社へ相談
対象機器に対応可能な保守事業者を選定し、以下の観点でサービス内容を確認します。
- 対応範囲(オンサイト対応、センドバック対応など)
- 対応時間(平日のみ、24時間365日対応など)
- サービス提供期間
- 費用および契約条件
複数社を比較し、自社の要件に合致するサービスを選定します。
延長保守サービスの契約
リプレースとのコスト・リスクを比較したうえで、延長保守の導入を決定します。契約手続きを進めるとともに、運用体制への組み込みを行います。
まとめ
PC・PCパーツの価格高騰は、円安・半導体需要増・地政学リスクなどの構造的要因が絡み合っており、短期的な解消は見込みにくい状況です。情報システム部門としては、まずはIT資産戦略を見直すことをお勧めします。
PC延長保守(第三者保守サービス)は、価格高騰時代における情報システム部門のコスト最適化の現実的な選択肢です。まずは自社のPC資産状況を棚卸しし、延命対象機器の特定から始めてみることをお勧めします。
JBサービス株式会社では、第三者保守サービスの提供に加え、PCのストレージ障害時のOSやアプリケーションの再導入・個別設定、予備機や代替機のキッティングおよび保管、VDI環境の導入から運用、ヘルプデスクサービスなど、情報システム部門のお困りごとを総合的にサポートします。PC延命対策でご相談先をお探しの場合は、お気軽にお問い合わせください。

