協働ロボットのメリットは?導入が進む背景と課題

更新日 : 2024年03月04日


協働ロボットと人

慢性的な人材不足が続いているなか、その補完のために労働現場でロボットを導入することも今では一般的になりました。現在では用途などに応じてさまざまな種類の産業用ロボットが選べるようになりましたが、なかでも注目されているのが「協働ロボット」です。

この記事では協働ロボットの概要をご説明しつつ、その導入のメリットや課題、実際に導入した現場の事例などをご紹介します。現場にロボットを導入しようとお考えの方は、ぜひご参考にしてください。

協働ロボットとは

協働ロボット

「人と協力してはたらく」という意味で名づけられた「協働ロボット」。産業用ロボットのなかでも、特に人間と協調しての作業に主眼を置いたものを指します。

これまでの産業用ロボットは、安全のために柵でおおわれていることが一般的でした。このため、人が活躍する現場からは隔離されてしまう格好となり、本当の意味での人との共同作業は行えなかったのです。

そこで、人とロボットとの間にあった柵を無くし、隔離されていない状態での作業を可能としたものが「協働ロボット」であると考えると、分かりやすいでしょう。

またこれまでの産業用ロボットは、柵を設けるなど規模の大きい設備とスペースを要するものでした。このため、大量生産ラインなど大規模な現場にしか導入できないという弊害もあったのです。その一方で、協働ロボットはそこまで大規模ではない作業現場にも導入が可能です。そういった意味でも、従来の産業用ロボットとは異なる新しい価値観から生まれたのが協働ロボットであるといえるでしょう。

協働ロボットの導入が進む背景

現代において協働ロボットが注目されている背景には、どのような社会的事情があるのでしょうか。

深刻な人手不足と「働き方改革」がもたらす課題

多くの先進国が抱えている社会的課題に「少子高齢化」があり、わが国も例外ではありません。それどころか、日本は特に少子高齢化を重大な社会問題として認識する必要のある国の1つです。

いわゆる「生産年齢人口」と呼ばれる15歳から64歳までの世代は、今後も減少を続ける見込みが指摘されています。業界を問わず、労働現場では今まで以上に人手不足が進むであろうと見込まれています。

あらゆる業界で人手が足りなくなることが危惧されていますが、特に製造業においては深刻な人員不足が懸念されています。厚生労働省の「2023年版ものづくり白書」[A1] によると、製造業の就業者数は20年間で158万人減少しています。一方で製造業における高齢就業者数は20年間で32万人増加しており、就業者の高齢化が顕著な状況です。

これに加え、近年は「働き方改革」が推進されており、労働時間の抑制も課題として加わりました。人手を確保し、生産性を高める努力が今まで以上に必要になったのです。

省人化や効率化が重要視される状況のなか、人と一緒に、人のように柔軟にはたらける協働ロボットが注目されています。

協働ロボットのメリット

協働ロボットのメリットとして、主に以下が挙げられます。

労働力の確保

深刻な人手不足が進む製造業においては、協働ロボットは労働力の確保に大きく貢献します。協働ロボットの導入によって生産ラインを省人化でき、正常に稼働できる限りは休日も残業もなくはたらき続けることができます。

また、ロボットは教育期間を必要としないため、生産性の高い労働力をすぐに現場に導入できるのもメリットです。

製造現場の作業員

品質の安定と生産性の向上

工場で人が作業する場合、効率の低下やミスの発生、品質のばらつきが発生することもあるでしょう。しかし協働ロボットの場合は、一定の水準を保ちながら作業を継続できます。

品質と作業効率が安定し、生産性の向上につなげることができるのです。

また、熟練した作業員の高い技術を協働ロボットにインストールできるため、属人化の解消や業務の平準化にも役立ちます。

作業員の労働環境の改善

製造業に対して、「作業が大変」「体力が必要」「危険な現場が多い」という印象を持ち、敬遠する人も少なくありません。しかし、協働ロボットを反復作業や重量物の搬送などに活用することで作業員の負担を軽減でき、労働環境の改善につながっています。

長期的なコストの削減

協働ロボットは導入時に初期コストがかかりますが、労働時間の規定がないため稼働時間に制限がありません。人件費の削減につながるだけでなく、人材採用や教育に必要な費用も不要なため、長期的な視点で見れば大きなコスト削減につながります。

協働ロボットの導入事例

協働ロボットは、どのような生産現場で活用されているのでしょうか。ここでは、製造業をはじめとするさまざまな業界における協働ロボットの活用事例をご紹介します。

食品加工における惣菜の盛り付け

惣菜の盛り付け作業は、従来ロボットによる自動化が難しい分野でした。協働ロボットによる柔軟で繊細な作業が可能で安全性の高い本体と、衛生的に利用できるグリッパ(握り)により、不定形物である惣菜を人に代わって盛り付ける作業を可能にしています。

もちろん柵も不要で省スペースを実現しているため、ライン上では作業者と並んで作業できます。

倉庫作業におけるピッキング業務

人の目による確認が欠かせないと思われてきた倉庫でのピッキング業務においても、協働ロボットを活躍させることができます。

この作業における協働ロボットの利点は、自律走行によって最適な経路で目的物までたどり着けるところです。ペースを乱すことなく、遅延の少ないピッキング作業を実現できます。

複数のピッキング作業を1つのルートで行うことも可能で、生産性と作業の正確さを大幅に高め、これまで人の手に頼ってきた業務の大幅な省人化をかなえられます。

製造現場での組み立て業務

従来の産業用ロボットも組み立て業務を行えましたが、大規模な設備や柵が必要だったため導入できる現場は限定的でした。

協働ロボットの導入により、これまで人が作業していたスペースにもロボットが入って作業することが可能になります。組み立て工程にも人が得意な作業と、ロボットに任せたほうが良い業務とがあるため、それらを効率的に分担できるのです。

協働ロボット導入時の課題・注意点

さまざまな導入メリットを備えた協働ロボットですが、取り入れるにあたっては注意すべき点もあります。

機能面の確認

協働ロボットの機能について、導入前に確認しておきましょう。協働ロボットはその名前のとおり「人と協力しての作業」や「自動化できる一部の作業」に特化した機能を備えたものです。協働ロボットを導入すれば、現場単位での完全自動化が実現するというものではないため、注意しましょう。

協働ロボットでかなえられるのは、あくまで現場の生産性の向上や人の業務の効率化です。完全な現場の無人化や、作業全体の自動化はできないということを把握しておかなければなりません。

安全面の確認

協働ロボットの性能面で、特に重視されている点に安全性があります。作業を効率的に行うことと同時に、ともにはたらく人の安全性を確保することも優先されているのです。

このため、協働ロボットには動作速度の制限があります。従来の産業用ロボットと比較すると、素早い動作はあまり得意ではありません。また可搬重量についても、あまり大きくない場合が一般的です。

人に代わって、柔軟で繊細な作業を行うことは得意分野ですが、重量のあるものを迅速に移動させるなどの大がかりな作業には向かない場合があります。

機器のメンテナンス

休日も残業も必要ない協働ロボットですが、精密機械であるため些少な要因で不調をきたすことや、経年劣化で稼働が困難になることがあります。安定稼働を保つには点検や消耗品の交換など、定期的なメンテナンスが欠かせません。

より効率的に協働ロボットを稼働させるには、確実なメンテナンスの実施とそのコスト管理が重要になります。

機器のメンテナンスはJBサービスに

JBサービスでは、さらなる協働ロボットの活用・普及に貢献するために、協働ロボットのメンテナンス代行サービスを提供しています。障害受付コールセンター、定期点検などをメーカー様やSier様に代わって実施いたします。協働ロボットを活用した新たなビジネス展開をご検討されているお客様は、ぜひJBサービスまでお気軽にお問い合わせください。

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