
モバイル端末やチャットアプリ、テレワークの普及により、現代のビジネスパーソンは時間や場所を問わずつながれる環境にあります。こうした背景のもと、注目されているのが「つながらない権利」です。働き方改革への取り組みがすすむなかで、日本でも「つながらない権利」について法制化に向けた議論が本格化しており、業務への影響やリソース不足への対応に悩んでいる人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、「つながらない権利」の概要から企業が直面する課題、具体的な解決方法まで詳しく解説します。
「つながらない権利」とは
「つながらない権利」とは、退勤後や休日などの勤務時間外に、メール・電話・チャットといった仕事上の連絡への対応を拒否できる権利を指します。デジタル技術の発展により、従業員は物理的にオフィスを離れていても、上司や同僚、取引先と常時つながる状況が生まれました。その結果、仕事とプライベートの境界が曖昧になり、十分な休息を取れていないケースが増えています。こうした背景から、欧州を中心に個人の健康を守る権利として「つながらない権利」が注目されています。フランスでは2017年に労働法で明文化され、従業員50人以上の企業に勤務時間外の連絡に関する取り決めを義務付けました。イタリアやスペインなどでも同様の動きが進み、国際的な潮流となっています。
2026年の働き方改革における「つながらない権利」の明文化
2026年の働き方改革では、「つながらない権利」の明文化が大きなテーマとなっています。約40年ぶりとなる労働基準法の改正に向け、勤務時間外の業務連絡を制限するガイドライン策定が議論されています。具体的な検討項目は以下になります。
- 時間外対応を人事評価に含めない仕組みの整備
- テレワークを適切に導入・運用するためのルールづくり
- 長時間労働の是正 など
厚生労働省の資料でも、単なる労働時間の上限規制にとどまらず、労働者の健康確保と生産性向上を両立する制度設計の重要性が示されています。「つながらない権利」を制度として明確化することは、従業員が安心して働ける環境づくりにつながり、今後の企業経営においても欠かせない視点となるでしょう。
企業が「つながらない権利」のルールを整備するメリット
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「つながらない権利」のルール整備は、企業にとって多くのメリットをもたらします。 |
従業員のメンタルヘルス改善
勤務時間外の業務連絡を制限することで、従業員は仕事から離れる時間が増え、十分な休息を確保できます。その結果、心身のリフレッシュが促進され、メンタルヘルスの改善につながります。さらに、ワークライフバランスの改善により仕事への満足度やエンゲージメントが高まり、モチベーションや生産性向上の好循環が生まれます。心身ともに健康に働ける環境は、企業の競争力強化にも直結します。
離職率の低下と採用力強化
明確なルールで従業員の権利を守る企業は、「働きやすい職場」として社内外から高く評価されます。従業員満足度の向上は離職率の低下に直結し、人材の定着を促進します。また、「つながらない権利」を尊重する姿勢は採用市場での強みとなり、ワークライフバランスを重視する若い世代を中心に優秀な人材を獲得しやすくなります。
明確な線引きを行うことによるハラスメントの回避
時間外の業務連絡は、ハラスメントとみなされるリスクがあります。上司からの深夜の連絡や休日の電話対応を求める行為は、特に問題視される可能性が高いといえます。明確なルールを定め、社内に周知徹底することで、意図しないハラスメントを防止することが可能です。全従業員が共通認識で行動できる環境は、健全な組織運営の基盤となり、社内のコミュニケーション円滑化にも寄与します。
企業がぶつかる「つながらない権利」の課題
「つながらない権利」の導入にあたっては、企業が直面する現実的な課題も存在します。
業務が停滞するおそれがある
休日や業務時間外でも、顧客からの連絡や問い合わせが発生するケースは少なくありません。グローバル企業では時差の問題により、24時間対応が求められる場面もあります。特に緊急性の高い案件やトラブル時に即時対応できない場合、業務が停滞し、顧客満足度の低下や信用失墜につながるおそれもあります。これらのリスクを踏まえ、顧客対応と従業員の権利保護の両立が重要な経営課題となっています。
人員不足や業務の属人化
多くの企業では慢性的な人員不足が課題となり、限られた人員で業務を回すなかで、時間外の対応を含む長時間労働が常態化しているケースも存在します。特定の従業員に業務が集中し属人化が進んでいると、休暇中も連絡対応を求められがちです。業務の標準化や平準化が進んでいない企業ほど、「つながらない権利」の実現が困難な構造的問題を抱えています。
企業がすぐに取り組むべき対策
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「つながらない権利」を実効性のあるものにするため、企業は以下の対策に着手する必要があります。 |
社内の意識改革とルールの整備
まず重要なのは、経営層から現場まで全社的な意識改革を進めることです。制度導入の目的や効果について丁寧に説明し、理解を得る必要があります。業務時間外の連絡を原則禁止とし、緊急時の対応ルールを明確化します。さらに管理職向けの研修や就業規則への反映を通じて、組織全体でルールを共有し、徹底した運用体制を整えます。
ツールの活用
ITツールを活用することで、「つながらない権利」の実現を支援できます。メール・チャットの予約送信機能では、業務時間内に配信されるよう設定することが可能です。顧客対応については、チャットボットやFAQシステムなどの自動応答ツールの導入により、基本的な問い合わせは自動対応にすることで、顧客サービスの質を維持しながら従業員の負担を軽減できます。
業務体制の見直し
業務を緊急度と重要度の観点から分類し、優先順位を明確にすることが重要です。即時対応が必要な業務と翌営業日に対応可能な業務を切り分けることで、時間外対応を最小限に抑えられます。また、BPOやアウトソーシングの活用も有効な選択肢です。外部の専門業者に業務の一部を委託することで、社内リソースの負担を軽減しつつサービス品質を維持できます。
内製化の限界を解決するアウトソーシング
人員や予算の制約により、すべての業務を社内で対応することが難しい企業は少なくありません。こうした場合、アウトソーシングを戦略的に活用することで、「つながらない権利」を守りながら業務品質を維持できます。
外部委託により、社内業務と委託業務の範囲を明確に切り分けられ、従業員は自身の担当業務に集中できます。時間外対応が必要な場合は専門業者が担う体制を整えることで、権利の確保と業務継続を同時に実現可能です。単なる業務代行にとどまらず、業務フローの整理や標準化から支援してもらえれば、業務効率化や属人化解消が進み、組織全体の生産性向上にもつながります。長期的な視点でも、アウトソーシングは有力な選択肢です。
「つながらない権利」の担保を支援するJBサービスのアウトソーシング
「つながらない権利」への対応は、企業の持続的成長と従業員の健康を実現するための重要な経営課題です。制度設計から業務体制の見直しまで、取り組むべき事項は多岐にわたります。
JBサービスでは、企業の「つながらない権利」実現を支援するため、さまざまな業務のアウトソーシングを承っております。お客様の業務内容や課題を詳細にヒアリングし、最適なソリューションをご提案いたします。従業員の権利を守りながら事業を成長させる持続可能な組織づくりに向けて、ぜひJBサービスのアウトソーシングをご活用ください。

