チャットボット(Chatbot)とは?種類や仕組みについての基礎知識
更新日 : 2024年10月03日
企業やWebサービスへの問い合わせは、従来は主に電話やメール、Webフォームなどで行われていましたが、近年ではチャットボットの活用が進んでいます。またお客様からの問い合わせだけでなく、社内システムの利用支援としてチャットボット(Chatbot)を導入する企業もあります。
チャットボットとは、どのようなシステムなのでしょうか。今回は、チャットボットの種類や活用方法についてご紹介します。
チャットボットとは
「チャットボット(Chatbot)」とは、「チャット」と「ボット」を組み合わせた言葉で、自動的に会話を行うプログラムのことです。Webサービスにて、「何か質問はありませんか?」と"コンシェルジュ"のように質問をするプログラムをご覧になったことはないでしょうか。
近年は人工知能と自然言語処理技術の発展により、Webサービスにおいてさまざまなチャットボットが登場しています。「お客様と従業員」のように、「ユーザーと企業」を結び付けるコミュニケーションツールとして期待されています。
チャットボットの歴史・変遷
チャットボットの元祖といえるのが、1960年代に開発された対話システム「ELIZA(イライザ)」です。
ELIZAにはあらかじめキーワード群と対応する言語表現パターン、返答用のテンプレート(文字列)が定義されています。ユーザーから入力があったとき、ELIZAは入力された文字列にキーワードがないか探し、もしあれば単語やフレーズを抽出、それらを返答用のテンプレートに当てはめて答えます。例えば「お腹が痛い」と入力すると、ELIZAは「なぜ〇〇?」というテンプレートに当てはめ、「なぜお腹が痛いの?」と問い返すという具合です。場合によっては自然な会話になるので、ELIZAの発表当時は機械が言葉を理解したかのように信じた人もいたそうです。
その後人工知能は発展し続け、2011年にはApple社からSiriが発表されました。マイクロソフト社やGoogle社なども続き、AIスピーカーのようにチャットボットの仕組みを応用したツールも登場しています。
人工知能の発展によりチャットボットも進化を遂げたといえますが、まだ現時点では人工知能が言葉の深い意味を理解して対話できる領域には到達していません。事前にインプットされたデータにより学習を行い、ユーザーの意図を推定して、その時点における最適な回答をしているのです。
チャットボットが会話する仕組み
チャットボットが会話する仕組みには大きく分けて2種類あります。
ルールベース(シナリオ)型
ルールベース(シナリオ型)は、チャットボットが選択肢を提示→ユーザーが選択肢から質問内容に該当する項目を選ぶ→チャットボットがさらに選択肢を提示→ユーザーが選択肢を選ぶ......という流れを繰り返し、最終的にチャットボットから回答が提示されるというものです。最近では動画で対応方法を説明するサービスもあります。
選択肢を選ぶ形式の他に、
チャットボットの質問に対して「何をお探しですか?」→
ユーザーの回答「××」
というような一問一答の形式も存在します。
<メリット>
ルールベース型(シナリオ型)は選択肢に沿って回答できるためユーザーの質問の意図と大きく異なることなく、正確な回答を期待できるのが利点です。「システムや機器のトラブル対応」「操作方法」など、起こった事象や課題の詳しい状況を整理していく必要がある問い合わせの対応に向いています。
<デメリット>
質問の選択肢が限られているために回答も限られ、複雑な質問への回答ができない場合があるのが難点です。一方で回答に必要な、質問と回答のリスト「QAリスト」の構築およびメンテナンスには時間とコストがかかります。
自動学習機能型(機械学習型、人工知能型)
人工知能により、統計的に正解する可能性の高い回答を選ぶチャットボットです。会話ログを自動的に学習し、正答率や会話の精度を上げていく仕組みを有しています。
<メリット>
ルールベース型よりも高度・広範囲の問い合わせに対応することができ、オペレーターなどにかかる人的コストを削減できます。
<デメリット>
人工知能は事前にデータを学習させる必要があり、自然な会話ができるようにするためには膨大なデータのインプットが必要です。この際に誤った学習をすると、誤った回答や不適切な会話を行うようになるリスクもあります。
チャットボットの活用事例
チャットボットは、以下のような用途でも利用されています。
社内用の「社内ヘルプデスク」
パソコンの操作方法や経費精算の方法など、社内でよくある問い合わせを自動化したものです。
お客様に対して回答を直接返す「自動応答型」
Webサービスに設置されたチャットボットが、自動的にお客様からの問い合わせに応じるものです。例えば家電メーカーのサイトにおいては製品の取り扱い方、自治体においてはゴミ収集についての問い合わせ対応といったものがあります。
お客様の問い合わせに回答するオペレーターへの「オペレーター支援」
お客様から問い合わせを受けたコールセンターのオペレーターが、チャットボットに問い合わせ内容を質問すると最適な回答を返すというものです。
チャットボットを用いるメリット
チャットボット導入には、以下のようなメリットがあります。
問い合わせ対応時間の短縮
よくある内容の問い合わせをチャットボットで対応することにより、対応時間の短縮が期待できます。
自動応答型にすることにより24時間対応ができる
24時間365日チャットボットを稼働させることにより夜間・休日の回答を実現可能です。機会損失の軽減と顧客満足度向上を図ることができます。
回答レベルの平準化、教育期間の短縮
コールセンターのオペレーターの場合、問い合わせ対応で同じマニュアルを参照していても、ベテランオペレーターと新人では回答内容・時間ともに差が出ることがあります。
チャットボットを使うとテクニカルスキルが不要となり、オペレーターのスキルに依存しない回答をお客様に提示できます。また教育の簡素化、ひいてはスキルアップに必要な工数・コスト削減も可能です。
チャットボットのデメリット
チャットボットの運用を軌道に乗せるためには、コストの問題、運用面の課題を解決しなければなりません。
初期コストがかかる
チャットボット導入にあたっては、「PoC(概念実証:Proof of Concept)の取り組み」「KPIの設定」「QAリスト作成」などが必要であるため、十分な準備時間と初期コストがかかります。費用対効果を得るまでは、数年かかる見込みとなることでしょう。
正答率を上げる細かなサポートが必要
チャットボットが安定稼働するためには、正答率の向上は欠かせません。ユーザー側としては、質問に対して正しい答えが返ってこなければ、「質の悪いサービス」と判断することもあるのです。したがって運用にあたっては、正答率や利用率のモニタリング、会話ログの分析、QAリストの更新といったように細かなサポートがカギとなります。
まとめ
チャットボットで社内・社外の問い合わせを自動化することで、本来集中すべき業務に集中できるようになるメリットは大きいものです。ただ企業によっては「自動化=人員削減」というイメージを持つ従業員もいるなどで、積極的な協力を得られない局面があるかもしれません。
チャットボットは、導入に入念な準備が必要ではあるものの、正しく運用できれば従業員の手助けとなりえます。円滑にチャットボットを導入するためには、経営者や情報システム担当者がトップダウンの意識を持ってプロジェクトを進めることが必要です。