デジタルトランスフォーメーション(DX)とは 企業が取り組むべき理由
更新日 : 2024年08月20日
近年、「デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)」という言葉を頻繁に見かけるようになりました。しかし、その意味を正しく理解している方はまだ多くないのではないでしょうか。
今回は、DXの定義をあらためて確認し、従来のIT活用と何が違うのか?なぜ今、DXへの取り組みが必要と言われているのかを解説していきます。
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは
DXの定義
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、もともと2004年スウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念です。
経済産業省が発表した「デジタルガバナンス・コード2.0(2020年11月)」によると、以下のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
またIDC Japanによる定義では、
「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(※)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立することを指す」
とされており、簡単に言うと、「企業がデータやデジタル技術を駆使し、新しい価値を創造するための仕組みを作ること」ということです。
※第3のプラットフォーム:ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術、クラウド、モビリティの技術を用いたITプラットフォーム
デジタライゼーション とDX の違い
DXと似たような言葉にデジタライゼーション(デジタル化)があります。数年前まで同じような意味で使われていたこともありましたが、この2つには違いがあります。
デジタライゼーションが、デジタル技術によって現在あるモノや仕組みを進化させ、業務を効率化をすることを目的としているのに対し、DXは、それを手段として、変革を進めることを意味しています。
つまり、RPA(Robotic Process Automation)を利用し、人間が行っていたアナログ作業の一部をデジタルに置き換えることだけでは、単なるデジタル化・自動化に過ぎません。RPAを戦略的に導入し、より付加価値の高い業務へ人材をシフトして、RPA活用の先にある働き方改革や新たなビジネス開拓をめざすことこそが、DXと言えます。
参考:https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1901/08/news007.html
日本企業がDXに取り組むべき理由
ではなぜ今日本の企業には、DXの推進が求められているのでしょうか。
経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」
日本企業の多くのITシステムは、複雑化・老朽化、ブラックボックス化が進んでいて、古い要素技術でシステムが構成されているために、故障すると代替がきかない、対応できる技術者の確保が難しい、システムが複雑でドキュメントも整備されておらず、運用・保守が属人化しているなどの問題を抱えています。
経済産業省は「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」の中で、日本企業がこうした「負の遺産」を解消し、大掛かりなシステム刷新を集中的に行わなければ、2025年以降、日本経済に年間で最大12兆円(現在の約3倍)の損失が生じる可能性があると試算し、このままでは崖を転がり落ちるように垂直落下するという意味で、「2025年の崖」と呼び危機感を募らせています。
レガシーシステムを使い続けることで、サイバー攻撃やシステム障害によるデータ損失のリスクが増し、事業の存続が危ぶまれるのはもちろんのこと、日本企業がDXを実現できずにデジタル競争の敗者となり、国際競争に遅れをとることが懸念されているのです。
市場の成熟化と消費者ニーズの変化
現代の日本は、モノが豊富にあり、不自由や不便を感じる場面は極めて少なくなっています。
人口がまだ増加傾向にあったかつての高度経済成長期には、「モノを作れば作るほど売れる」という状況にありましたが、ほとんどの市場において商品やサービスは消費者の顕在ニーズを満たしてしまい、さらに人口減少が加速していくという現在においては、従来のビジネスの延長線上では企業の永続的な発展は見込めず、市場から淘汰されてしまいます。
カーシェアリングや音楽・動画配信サービスに代表されるサブスクリプションビジネスの急速な成長からもわかるように、消費者の価値観・ライフスタイルは、"モノ"(製品の機能・スペック)から、"コト"(経験・体験)、そして"所有"すること"から"利用・共有"(必要な人が必要なタイミングで必要なモノやサービスを利用)へと変化しています。
これらの変化や消費者の潜在的なニーズを敏感にとらえ、企業が継続的に成長していくためには、デジタル技術を活用し、戦略的に新たな付加価値を生みだしていくこと=DXが求められているのです。
日本企業におけるDXの取り組み
では、日本の企業において、DXの取り組みはどの程度進んでいるのでしょうか?
4割にも満たない日本のDX推進
日経BP総研が2019年11月に発表した『DXサーベイ~900社の実態と課題分析』によると、DXを推進している企業は36.5%、全く推進していない企業が61.6%になることが分かりました。
またDXを実際に推進している企業の取り組み状況については、「本気で取り組み、目覚ましい成果を上げている」のはわずか1.2%、「本気で取り組み、一定の成果を上げている」のは25.1%、「本気で取り組んでいるが、まだ成果を上げていない」企業は39.4%、実際に、本気で取り組んでいる企業でも6割はまだ成果を上げるに至っていない状況です。
遅れの原因は人材不足
日本のDX推進が進まない主な原因は、スキル・人材不足です。DXの推進に欠かせないデジタル技術と業務の両面で専門知識を持つ人材の確保・育成は、DXに取り組む企業にとって大きな課題です。社外調達と社内育成を組み合わせ、長期的視点から人材を確保していくことが求められています。
コロナ禍で加速するDX
日本は諸外国に比べ、DXへの取り組みが遅れていると言われてきましたが、昨今の新型コロナウイルス対策を巡っては、感染者情報が電話やファックスでやりとりされているために、集計ミスが発生してしまったり、給付金のオンライン申請手続きにおいて、住民情報との照合や入力ミスのチェックなどを、職員が人海戦術で確認しているがために給付が大幅に遅れるなど、行政のデジタル化の遅れが浮き彫りにされてしまいました。
一方、緊急事態宣言の発令による外出自粛を受けて、オフィスワーカーはテレワークへ強制的にシフトされたことにより、クラウドサービスやビデオ会議ツールの利活用が急速に進み、デジタル技術がもたらす新たな働き方に気付くことができました。今後もテレワークが定着すれば、多様な人材がもっと活躍できるのではないかと期待されています。
また、工場や倉庫など「非接触」な職場環境を実現するのが難しいとされる製造業の分野で、AIを搭載した産業用ロボットによる「無人化ソリューションが加速していく」と考えられています。
世界はウィズ/アフターコロナ時代の新しい生活様式に向けて、大きく動き始めています。
日本の企業もこのコロナを好機としてとらえ、DXによる新しい企業活動の在り方について今こそ本格的に取り組むことが必要です。
まとめ
今回は、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の言葉の意味と、なぜ今、DXへの取り組みが必要なのかについて、ご紹介しました。JBサービスでは、お客様のデジタルトランスフォーメーションの支援に積極的に取り組んでいます。AIやIoT,クラウドなどのデジタル技術を活用した新しいビジネスモデルのヒントやアイディアについて相談したい、DXについてディスカッションしたいなど、ぜひお気軽にご相談ください。