AIOpsとは?AIOpsの用途やメリットについて
更新日 : 2021年03月24日
AIOpsという言葉を聞いたことはあるでしょうか。大まかにご説明すると、AIOpsとはAIを用いた運用業務を支援し効率化を図るという概念で、情報システム部門の運用管理者に大いに関係します。AIOpsが提唱されて以来、AIOpsに関わるさまざまな製品が開発され、その適用範囲は徐々に広がっています。従来の運用管理方法が立ち行かなくなってきたと感じているなら、今後の運用改善のため、AIOpsの用途やメリットについて知っておきましょう。
AIOps(エーアイオプス)とは
AIOps(エーアイオプス:Artificial Intelligence for IT Operations)とは、AIを活用したIT運用管理の概念を指します。AIOpsは、AI・人工知能やビッグデータ、機械学習(ML)を組み合わせ、システムの安定的な運用を支援するものです。アメリカの調査会社であるガートナー社が提唱しました。
企業の情報システムは、システムの形態1つとってもオンプレミスやクラウド、仮想化といったように多様化しています。企業内の各拠点や部署ごとに、それぞれ異なるツールやルールで運用を行っていることも珍しくありません。一方で、それらの情報システムによるデータの生成速度は増しており、データ量も増加しています。データの処理は、従来の運用方法で自動化が困難な場合は人の手で行うことになります。ただ多くの企業ではIT人材が不足していることもあり、膨大なデータを処理し情報システムの安定性を保つのは簡単なことではありません。
そこで、AIの特徴である処理の速さ・正確性を活かした運用支援が提唱されました。AIOpsは、情報システムで生成される大量・多様なデータを収集・分析し、あらゆるIT運用に活かすことを目的としているのです。
AIOpsを実現するシステムのことを、AIOpsプラットフォームと呼びます。AIOpsプラットフォームは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を組織的に推進するうえで重要なツールであると、ガートナー社は言及しています。
AIOpsの特徴・用途
AIOpsの特徴
AIOpsは、以下のような特徴・要件を少なくとも持ち合わせています。
- 複数のデータソースからのデータ取り込み
AIOpsではシステムやネットワーク、クラウドなど複数のデータソースからデータを取り込むことを特徴の1つとしています。また、過去の履歴データやリアルタイムのストリーミングデータが利用可能です。このことから、過去のデータを用いてリアルタイムのデータに対する予測をかけることができます。取り込んだ過去のデータ、ストリーミングデータは有用な形で保存され、アクセスが可能になります。
- 機械学習を利用した分析や提案
データの取り込みと同時に、機械学習を利用してリアルタイムで分析することも、AIOps要件の1つです。データ分析は自動で行われ、情報システムが持つ根本的な問題となる"パターン"を発見します。発見されたパターンは、今後発生する可能性のあるインシデントやシステムの新しい動作を予測するために用いられることとなります。
AIOpsの用途
またAIOpsの用途としては、以下が挙げられます。
- パフォーマンス分析・監視
情報システムで発生するビッグデータをAIが分析し、問題が起こらないか監視するものです。
- 異常検知
過去のデータと比較し突出して異なる値(外れ値)を特定するのが、異常検知です。情報システムで起こり得るイベントにおいて、予測値と実データの差を自動的・かつ迅速に比較し、運用管理者に異常を知らせます。
- 根本原因の分析・対処法の検索
情報システムで発生したイベントを自動的に分類し、トラブルなど対処が必要と判断された場合には、過去のデータから対処法を検索します。
- IT サービス管理(ITSM)
ITサービス管理(ITSM)とは、企業内の情報システムの設計・構築から運用・サポートに至るまでのプロセス全般を指します。たとえばインフラやデバイスの管理、ストレージのリソース管理といった業務に対し、AIOpsを適用させることも可能です。
AIOpsのメリット
AIOpsのメリットは処理を自動化できることと、その迅速さおよび正確性にあります。
- 処理速度・正確性の向上
AIOpsは自動的に、複数の情報システムから大量のデータの収集・分析を行うので、それらを手動で行う場合と比較し処理速度と正確性が大幅に向上します。
- コストやリソースの削減
データ収集の高速化・正確性向上により、工数や費用、人的リソースの削減につながるとともに、業務の品質向上も図ることが可能です。また情報システム部門の負荷軽減により、担当者が仕事満足度を高め、より付加価値の高い有益な仕事へと注力できます。
- 情報システム部門と業務部門の連携
AIOpsの導入においては、情報システム部門が各業務部門と調整を行うことが必要です。したがって今後の情報システムの展望を話し合うなど、情報システム部門と業務部門が連携を強めることにもつながります。
AIOpsの始め方
ガートナー社はAIOpsを始めるにあたり、段階的に進めることを推奨しています。
AIOpsの進め方
1.スモールスタート
AIOpsプラットフォームの適用は、システムの狭い範囲や、さほど重要でないアプリケーションから始めることになります。情報システムが違うとそのシステムごとに保管しているデータの形式や構造が異なる場合があり、データの取り込みには形式を統一することに時間をかけることになります。まずはデータを取り込むことに重点を置き、システム形態や部門の垣根を超える方法を確立することが第一です。
2.データを大量に取り込み、分析する
データの取り込みが問題なくなれば、過去のデータとストリーミングデータを大量に取り込み、データへのアクセスを可能にするよう推進することとなります。また取り込むデータの中から、優先度が高いと判断された課題に対して根本原因の分析を行います。この一連の流れが自動化される段階になれば、情報システム部門の負荷軽減が期待できるようになるのです。
3.適用範囲の拡大
限定された範囲でAIOpsの適用が成功すれば、適用範囲を徐々に拡大していきます。システム停止などのリスクが低い範囲からリスクが中程度となる範囲へ広げ、その中から優先度の高い課題に取り組むことになります。
AIOpsプラットフォームの例
AIOpsプラットフォームには既にこのような製品があります。AIOpsは、製品を導入すれば実現できるというような簡単なものではありません。しかし製品の機能や導入事例を確認することで、自社に必要で適切なAIOpsプラットフォームであるかどうかをある程度判断することが可能です。
- Watson AIOps
IBMの人工知能・Watsonを使ったAIOpsプラットフォームです。機械学習、自然言語理解(NLU)、自然言語処理(NLP)といった技術を使い、データ管理や異常検知、イベントの関連付けなどの機能を備えています。
- Splunkシリーズ
ビッグデータ分析ソフトやSaaS型のプラットフォームを提供している商品群を擁するSplunk。サービス監視と予測分析を行う製品[A1] があります。
- OpsRamp
既存管理システムと連携し、リソースの自動検出・監視・管理などシステム環境を一元的に管理するSaaS型の企業向けプラットフォームです。オンプレミスとクラウドを組み合わせた複雑なIT環境における運用管理支援としても使えます。
まとめ
この記事では、AIOpsについて簡単にご紹介しました。日々、膨大で煩雑な作業に追われている情報システム運用管理者も多いことでしょう。AIOpsおよびAIOpsプラットフォームは、そんな運用管理者を手助けする仕組みです。もし情報システム部門の成長を考えているなら、改善したい運用方法や適用したいAIOpsプラットフォームについて、さらに検討を重ねてみてはいかがでしょうか。