PC展開におけるプロビジョニングとは?プロビジョニングパッケージのメリットと注意点
更新日 : 2024年09月06日
組織内に新しく複数のPCを設定する場合に使う手法といえば、これまでクローニングが主流でした。現在ではクローニングとともにプロビジョニングという手法も行われています。 プロビジョニングにはクローニングとは異なるメリット・デメリットがあり、活用にあたっては注意が必要です。 この記事ではPC展開におけるプロビジョニングについて、ご紹介します。 |
目次 |
プロビジョニングとは
一般的に「プロビジョニング」とは、設備やサービスが新たに必要になったときに資源を割り当て、設定等を行って設備やサービスを利用できるようにすることです。プロビジョン(provision)という単語は、提供、準備、引当という意味を持ちます。
プロビジョニングの種類
プロビジョニングは元々通信業界で利用されている言葉でしたが、現在では他の分野にも派生し、「割当」に似た意味で使われています。
<例>
- ユーザープロビジョニング(アカウントプロビジョニング)
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- コンピューターシステムを新規ユーザーが使う際に、アカウントやアクセス権限、ソフトウェアの設定等を行う
- サービスプロビジョニング
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- 顧客向けにサービスの設定を行う
- サーバープロビジョニング
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- サーバーを利用可能な状態にする
このようにプロビジョニングには種類があります。このコラムでは、PC展開のプロビジョニングについてご紹介します。
PC展開におけるプロビジョニングとは
PC展開におけるプロビジョニングとは、キッティングの手法のひとつです。キッティングとは、PCやスマートフォンなどの端末に、OSやアプリケーションのインストールや各種設定を行う作業全般のことです。 PC展開におけるプロビジョニングは多くの場合、WindowsをOSとするPCに対して、Windows ADKを利用したキッティングのことを指します。Windows ADK(Windows Assessment and Deployment Kit)は、新しいPCにWindowsやその他ソフトウェアを自動的にセットアップするツールです。 |
具体的には、Windows ADKであらかじめプロビジョニングパッケージ(PPKG)という、PCに適用したい各種設定を収めたファイルを用意しておき、必要なPCでそのファイルを実行することで割当を行います。
Windowsのプロビジョニングパッケージ(PPKG)とは?
Windowsのプロビジョニングパッケージ(PPKG)には、アプリケーションの導入や証明書の配布、Wi-Fiなど、PC利用に必要となる情報を一通り含めることができます。
プロビジョニングパッケージはWindows ADKに含まれる「Windows 構成デザイナー(Windows Configuration Designer:WCD)」という無償のツールで作成可能です。
PC展開におけるプロビジョニングのメリット
PC展開におけるプロビジョニングのメリットは、下記のとおりです。 |
設定ミスや作業漏れがなくなる
PCの設定を手作業で行う場合は、設定ミスや作業漏れが発生する可能性があります。プロビジョニングであれば、一度作成したプロビジョニングパッケージを使用して複数のPCへ展開するという仕組みから、設定ミスや作業漏れが少なくなります。
クローニングと比較して「機種に依存しない展開が可能」
クローニングとは、マスター(元)となる環境をイメージファイルにし、そのマスターイメージを他のPCへコピーする手法です。マスター展開、マスターPCなどとも呼ばれます。
クローニングによるPC展開は管理者の負担を減らし、作業ミスも防ぐことが可能です。ただしクローニングの場合は、機種やOSごとにイメージファイルを作る必要があります。その検証のため、管理者はそれぞれの機種やOSの知識を有しておかなければなりません。
一方、プロビジョニングは機種に依存しないため、複数のメーカーやモデル、あるいはデスクトップPCかノートPCかに関わらず適用できます。機種ごとにマスターPCを作成する手間が省けることもメリットです。
ただしOSに関しては、同一のOSのみ同じプロビジョニングパッケージを使うことが可能です。
サーバーやネットワークに接続不要、どこでも作業ができる
プロビジョニングパッケージはUSBメモリやSDカードにも作成可能です。したがってPCがネットワークに接続されていなくても、キッティング作業を行えます。
OSの設定、アプリケーションのインストールも可能
プロビジョニングパッケージはOSごとに作成する必要があるものの、OSの設定を適用できることが利点です。またサイレントインストール対応のアプリケーションであれば、同時にインストールすることが可能です。
Windows ADK以外のツールは費用がかからない
Windows ADKによるプロビジョニングは、他の手法と比較して低コストといえます。Windows ADK以外のツールには費用がかからず、またオフラインでも展開できるため、インターネット料金もかかりません。
Microsoft Configuration Manager(旧SCCM)とプロビジョニング
Microsoft Configuration Manager(MCM/旧:SCCM)とは、Microsoftが提供している、多数のコンピューターを遠隔操作できるシステムです。複数のPCに対して、設定やアプリケーションのインストール・アップデータやバグの修正などを一元管理できます。またインベントリの管理も可能です。
Configuration ManagerでOSを展開する場合にはWindows ADKが必要となります。
Microsoft Intune への登録もプロビジョニングパッケージで可能
Microsoft Intuneは、クラウドでエンドポイント管理ができる製品です。プロビジョニングパッケージを用いると、Intuneへの登録とともに、Microsoft Entra ID(旧:Azure AD)にも各デバイスを自動登録させることができます。
なお、Microsoft Intuneに含まれるデバイスのセットアップツール「Windows Autopilot」でも複数のPCにプロビジョニングが可能です。ユーザーがログインするだけで自動的にセットアップができる便利な機能ですが、こちらはクラウド環境を用いるため、PCをインターネットに接続する必要があります。
プロビジョニングパッケージを利用する際の注意点、デメリット
プロビジョニングにはメリットだけでなく、デメリットもあることに注意が必要です。
アプリケーションはサイレントインストールに対応している必要がある
プロビジョニングでインストールするアプリケーションは、ユーザーの操作や入力を必要としない「サイレントインストール」に対応しているもののみ適用できます。
ただしサイレントインストール対応のアプリケーションでも何らかの理由でインストールできない可能性はあるため、事前の検証は必須です。
設定できないものもある
アプリケーションはインストールのみ可能で、設定変更はできません。またホスト名も自由に設定できません。アプリケーションの設定やホスト名を変更したいのであればプロビジョニングパッケージの適用後、個別に設定することになります。
完了するまでに時間がかかる
プロビジョニングはプロビジョニングパッケージを一斉適用するわけではなく、1台ずつPCに適用していくこととなります。そのため全てのPCに適用完了となるまでには時間を要することがあります。プロビジョニングは少ない台数のPCのキッティングを低コストで行いたい場合に向いているといえるでしょう。
ただしプロビジョニングパッケージの適用は非エンジニアでも可能な程度の難易度と評されるため、他の人の協力を得られれば、短時間で全PCへの適用を終えられる可能性もあります。
Windowsのバージョンごとにプロビジョニングパッケージ作成が必要
プロビジョニングパッケージは、Windowsのバージョンごとに作成が必要です。複数の環境を利用している組織の場合は、情報システム部門の負荷が高くなる可能性があります。
まとめ
PC展開におけるプロビジョニングについて、メリットや注意点をお伝えしました。プロビジョニングやクローニング、クラウドベースで行えるWindows Autopilotなど、PC展開の方法にはいずれもメリット・デメリットがあり、何が優れているとは一概に言えません。環境に合わせてベストな展開方法を選ぶとよいでしょう。
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