3Dプリンタ-の安定稼働を支えるプロフェッショナル集団! お客様の立場で品質向上の取り組みを実践
更新日 : 2021年12月15日
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JBサービスの3Dプリンター保守サービスについて
―――皆様の業務内容に関してお聞かせください。
石亀氏: 3Dカスタマサービス部は、3Dプリンターの保守サービスが主な業務です。新規設置から、トラブル発生時の現地訪問・修理、保守契約に含まれている定期点検を実施しています。
新規設置については、以前は輸入してそのまま装置をお客様先にお送りしていましたが、海外製の3Dプリンターは届いてもすぐに動かないなどのトラブルがあったため、現在は弊社で出荷する前に点検を行い、故障がないかを厳重にチェックした上でお客様先にお送りするようにしています。
―――サービスの内容に関して詳しく教えて下さい。
石亀氏:弊社運用センターのSMACコールセンター(以下SMAC)にて受付し保守サービスを行っています。ご使用中のお客様からお問い合わせが発生すると、SMACで受付後、担当の技術員に通知が届きます。その後、お客様へご連絡させていただき、状況をお伺いします。電話で復旧が可能な場合はそのままお客様へ操作方法をお伝えします。復旧ができない場合は、技術員がお客様のもとへ直接お伺いし、対応させていただく流れとなっています。
3Dプリンター保守サービス体制
―――サービスの開始時期や体制、現在の規模について教えて下さい。
石亀氏:3Dプリンターの保守サービスは2009年から開始しています。当初は数名で、米国3D Systems社様の対応を開始しました。その後2013年の3Dプリンターブームもあり、お客様の導入台数の増加に伴い全国に技術員を増員しております。
現在、弊社には3Dプリンターの対応ができる技術員が30名程の体制となっており、500台以上の3Dプリンターの保守サービスをしています。
当初は3D Systems社様の装置だけでしたが、最近ではStratasys社様やXYZプリンティングジャパン社様などマルチベンダーの保守サービスの対応をさせていただいております。
※現在主要メーカーを中心に10社ほどのメーカーに対応
3D事業の取り組み
お客様の3Dプリンターの活用事例について
―――どのような用途での活用が多いのでしょうか?
石亀氏:現在、弊社では工業系、フィギュア系、宝飾や歯科系の業界など、幅広い業種のお客様の保守サービスをさせていただいております。開発中の製品の試作や形状確認ツールとしてのご使用や、鋳造して実際に製造ラインで使われているお客様もいらっしゃいます。最近では造形技術や材料の進化により、3Dプリンターで造形したものをそのまま最終製品としてご使用されているケースも増えてきていると感じています。
お客様の課題に対しての解決方法
―――修理対応時に新品への買い替えを提案するケースはありますか?
石亀氏:保守契約をいただいているお客様の修理対応時に、弊社から買い替えの提案はしておりませんが、お客様のご要望や業務内容に応じて新しい製品をご紹介することはあります。
保守契約をいただいていないお客様の場合は修理にかかる費用を事前にお伝えしています。その結果を以て、新品への買い替えを検討されるお客様はいらっしゃいます。
―――部品などの手配や調達はどのように行っていますか?
石亀氏:それぞれのメーカーによって対応が異なっています。予め弊社がメーカーから部品を購入し在庫を確保しておく場合や、都度メーカーから部品をお預りして必要に応じお客様先に発送する場合もあります。
中村氏:現在はどの部品をどれくらい在庫しておけば対応できるかということが分かるようになってきましたが、サービス開始当初は情報も乏しく、「もう少しこの部品の在庫を持っておけば...」という状況もありました。
その後の対応実績から、現在では経験と知識を蓄積してきたことで、最適化されてきていると感じています。
最近では一部の機種で、IoTを活用した故障の予兆検知なども行っていますので、故障が多い部品の在庫数の見直しを継続的に行い最適化に取り組んでいきたいと考えています。
―――これまでのナレッジが活きているということですね。
中村氏:この状況だともうすぐこの箇所の故障が発生するかもしれないという情報がナレッジとして蓄積されてきていますので、これからも活用していきたいと考えています。
品質向上に向けた取り組み・技術員の育成
―――なぜ様々なメーカーの保守・修理サービスやエリアに対応できるのでしょうか?
中村氏:サービス拠点の連携が強みだと考えています。お客様は北海道から沖縄までいらっしゃいますので、拠点は各地区にあります。例えば中部のお客様からサポートのご依頼があった場合は、通常、名古屋のサービス拠点から出動しますが、すぐに対応できない場合は豊洲事業所からサポートを行える体制をとっております。このような連携をすることで、全国のお客様をサポートしています。
また、リモートサポートを活用して、遠方ですぐに訪問ができないお客様の場合はインターネットを経由して、技術員が遠隔操作で装置を復旧したり、あるいは応急処置をして、現地にお伺いするまでお客様の業務停止を最小限にできるような対応もしております。
電源が全く入らない状態では対応ができませんが、遠隔で解除できるエラーや、ソフトウェアの操作の問題などはリモートサポートで解決できるケースがあります。
―――各地の技術者の育成はどのように行っているのですか?
石亀氏:海外メーカーのマニュアルは日本語版が無いこともありますので、必要に応じてメーカーのマニュアルと共に、今まで弊社で対応した実績をまとめたオリジナルのマニュアルを作成し、全国の技術員で共有するなどスキル向上のための取り組みをしています。
また、四半期に1回、全国の技術員を集めて社内研修会を開催し、各拠点の技術員の教育を行うことで作業品質の標準化へとつながる活動をしています。
―――サービス品質向上の取り組みはどのように行っているのですか?
石亀氏:サービス品質向上の取り組みとして定期点検の作業内容の見直しを行っています。保守契約には定期点検が含まれていますが、作業内容を装置に合わせて定期的に見直し、お客様に長期間安定してご使用いただけるような取り組みをしております。
また、メーカーへは、トラブル発生時に状況を報告することで、今後の品質改善に役立てていただくとともに、新しいタイプの3Dプリンターを開発・製造する際には、弊社からナレッジの提供などもさせていただいております。
最近だとXYZプリンティングジャパン社様と、SLSタイプの大型機の造形品質について弊社にて検証を行い、メーカーとともに改善に取り組んでいます。
―――協業するメーカー、パートナー様をどのように支援しているのですか?
石原氏:お客様と直接やり取りの経験が少ないメーカーに、実際に現場で使用されるお客様のニーズをお伝えするようにしています。
私たちは現場の経験から、装置の構造やメンテナンス性、お客様の使い勝手の部分など現場の声を基にメーカーへ提案して、改善をしていただけるよう取り組んでいます。
また、商品の開発段階で改善のお手伝いができるよう、お話しをさせていただくこともございます。
石亀氏:過去にメーカーでエンジニア経験があるスタッフもいますので、その経験やスキルを活かして製品品質の改善につながる提案しています。
石原氏:弊社の技術員は現場のお客様に近いところにいますので、現場だからこそ聞けるリアルな要望や声もメーカーへお伝えすることができます。このような活動を継続的に行っていくことで最終的な品質向上へつながる相乗的な効果があるかと考えています。
―――日頃の定期点検、保守サービスで心がけていることとは何ですか?
石原氏:私たちの作業によって装置が安定稼働できるようにすることを心がけています。保守サービスの対応で、造形品質が変わってしまうこともありますので、お客様の装置のコンディションを維持することは重要だと考えています。維持することが難しい場合もありますが、私たちのノウハウでご支援できればと思っています。
―――苦労しているところや大変だったエピソードはありますか?
中村氏:トラブル対応が長期化してしまうケースも中にはありますが、3Dプリンターが稼働しないとお客様の業務が停止してしまうことが考えられます。その場合、お客様からデータを送っていただき、弊社で代理造形を行うサービスでお客様の業務が停止しないための体制もとっています。
―――それはクライアント様からしたら安心な内容ですね。
中村氏:全ての機種の代理造形の対応はできていませんが、状況に合わせてお客様へご迷惑がかからないようなサポートができるよう心がけています。
―――こちらからのフィードバックで変わった点はありますか?
中村氏:プリントヘッドと呼ばれるマテリアル(材料)の射出部分のトラブルについてはメーカーへ継続的に報告をしてきました。現在では初期の製品品質と比較すると改善されてきているのではないかと思っています。
石亀氏:トラブルが発生した際にメーカーのエンジニアと一緒に弊社内で造形品質の検証をするというケースもありました。
出荷前点検や造形品質の検証等を行う3Dインスペクションルーム
※画像をクリック(タップ)すると360°自由に視点移動ができます。
Stratasys PolyJetシリーズ |
3D Systems ProJetシリーズ |
実際の取り組み事例と今後の予想
―――医療機器の修理サービスへの取り組みについて教えて下さい。
石亀氏:歯科分野での3Dプリンターの活用は、3Dプリンターのブームから少し遅れてピークとなっています(2017年~2018年)。最近では韓国製や中国製の海外メーカー製品が日本でも販売されてきていますが、代理店様がアフターサービスの体制構築についてお困りになっているケースもあります。国内の代理店様の取り扱いする機種も様々なメーカー、様々なモデルが増えてきているので対応が難しいこともあるかと考えています。我々は薬機法の修理業を取得しておりますので、医療機器のサポートに関してお客様の課題の解決にご協力したいと考えています。
―――他に医療機器以外で、今後活発になるような業界はありますか?
石亀氏:今後は金属3Dプリンターが活用される分野が拡大していくことが見込まれています。
石原氏:現在、チタン、アルミ合金まで対応する機種も登場してきています。
石亀氏:最近は新しい造形方式も登場し少しずつ装置価格が下がってきている傾向はあります。 今後、金属3Dプリンターで最終製品を造形する市場は伸びていくと思いますので、我々も対応していきたいと考えています。
中村氏:以前に比べると、業務に組み込まれることで3Dプリンターの重要度が増していると感じています。そのため、お客様の業務が遅延してしまうのを防ぐために、代理造形やリモートサポートといった対応がより必要になってきていると考えています。
今後の展望について
―――今後のサービスの展望に関して教えて下さい。
石亀氏:お客様向けの取り組みとして、弊社のサービスを提供しているお客様に集まっていただき、情報交換会という形でJBサービスから最新の事例やノウハウを定期的にご報告しています。その際にメーカーの方にご講演いただき最新情報をお話いただいたり、お客様同士でコミュニケーションを取っていただくという場も設けていたりしています。
(コロナの影響で現在は開催方法検討中)
また、弊社のホームページ上にも技術情報や、日常ご使用される際の質問事項や、エラーが起きた場合の対処方法など、3Dプリンターをお使いのお客様に役立つ情報を定期的に情報公開しています。そのような情報を今後はAIチャットボット対応にしたいと思っています。現在はまだ社内の技術員向けにAIを育成している段階ですが、これからお客様向けにも展開できないかと考えています。
今後も弊社としてはお客様に満足していただける高品質なサービスの提供により、安定して装置をお使いいただくことで3Dプリンター活用のためのご協力ができることを目指しています。
協業メーカー様・パートナー様からのコメント
XYZプリンティングジャパン株式会社 営業&マーケティング部 ストラテジックセールスマネージャー 多田 遼太 様 |
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2013年設立以来、弊社はコンシューマー向け3Dプリンターを中心に製造販売を行い、出荷台数グローバルシェアNo.1の実績を誇ります。2018年より産業用3Dプリンタ市場に参入し、JBサービスとの協業を開始しました。他社3Dプリンターで提供されている保守サービスの評価が高く、技術面の経験と知識が豊富なことが、協業開始の決め手です。台湾本社へもJBサービスの技術員に来ていただき、よりお客様に近い立場として、ご意見をいただけたことも評価しています。現在はJBサービスの豊洲事業所に実機を設置して運用してもらい、品質向上を図るべく、両社で情報共有をしながら業務を推進しています。 | |
株式会社イグアス ビジネス開発事業部 3Dシステム営業部 部長 吉澤 岳明 様 |
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(株)イグアスは、2009年から3ⅮSystems社の国内ディストリビューターとして3Ⅾプリンター販売をスタート致しました。JBサービスとは、同年より3Dプリンター販売後のアフターサービスの部分を委託しており、3Ⅾプリンターの保守サポート、機器導入サポート、ユーザーへの操作教育の部分を担って頂いております。特に、3Ⅾプリンターの導入時には、お客様に万全の状態で納品すべく、豊洲事業所にてお客様への出荷前に3Dプリンターの点検を実施しており、安心してお客様に販売できる状態にして頂いております。また、お客様が新しい機器に買い替える際に、JBサービスの保守サービスを評価してもらい、他社ではなく継続して購入してもらったケースもあります。今後も取り扱い製品が増えていく中で、お客様へ安定した品質を提供するために、JBサービスと一緒に努力していきたいと思っています。 |