企業が対策すべきハラスメントの種類と対策とは

更新日 : 2021年01月28日

企業におけるハラスメントは、毎年増加し続けています。

ハラスメントの1つであるパワハラを防止するため、「労働施策総合推進法」の改正法が2020年6月から大企業にて施行されました(中小企業では2022年4月から施行)。

この法律に象徴されるように、今や企業にとってハラスメントへの対策は欠かせないものとなっています。


この記事では、企業が対策すべきハラスメントの種類と対策をご紹介します。

目次

  1. 企業におけるハラスメントの実態
  2. ハラスメントによる企業のリスク
  3. 企業が注意すべきハラスメントの種類
  4. ハラスメントのない職場とするために
  5. ハラスメント対策に活用されるサービスとは
  6. まとめ

企業におけるハラスメントの実態

都道府県労働局などの総合労働相談コーナーには、労働に関するさまざまな相談が寄せられます。

相談内容のトップは「いじめ・嫌がらせ」で、いわゆるパワハラに関するものです。総合労働相談コーナー内の「いじめ・嫌がらせ」の相談件数は2012年度にトップになってから増加し続け、2019年度には8万7,570件となりました。

また、ハラスメントの中でもセクハラに関しての相談件数が、2019年度に7,323件にも上っています。妊娠・出産等に関するハラスメント(マタハラ)だけでも2,131件でした。育児・介護に関するハラスメントの相談も多い傾向にあります。

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ハラスメントによる企業のリスク

ハラスメントによる企業のリスクの最たる例は訴訟です。過去にはハラスメントに関する民事損害賠償請求訴訟や行政訴訟が行われています。

ハラスメントが認められた例としては、大手電機メーカーに勤務していた女性社員が、同僚からいじめや嫌がらせを受けて精神障害を発症した事案があります。この件では女性社員が精神疾患を発症した原因が、執拗な悪口や嫌がらせが常軌を逸した陰湿ないじめであること、企業側も長年措置を取らなかったことであると認定されました。

ハラスメントに関する訴訟は、被害者側の訴えが認められないケースもあります。いずれにしろ企業や団体の名前は公表されるため、企業・団体のイメージが低下することは否めません。


訴訟とまではいかなくてもハラスメントが行われる現場は生産性が低下し、人材が流出する恐れをはらみます。

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企業が注意すべきハラスメントの種類

ここでは改めて、ハラスメントの種類を認識しておきましょう。

事業所で発生するおもなハラスメントは、以下のように分類されます。

パワハラ(パワーハラスメント)

会社での地位や人間関係などの優位性を背景に、労働者が業務上の適正な範囲を超えて苦痛な行為を受けて就業に支障が出ることを「パワーハラスメント」と言います。この苦痛となる行為には大きく分けて6つあります。

まずは「身体的な苦痛」で、殴る蹴る、ものを投げるなどの暴力行為を指します。「精神的な苦痛」は暴言や侮辱、名誉毀損など相手の内面を否定するような行為です。

部屋の隔離や仲間はずし、無視などは「人間関係からの切り離し」としてパワハラに分類されます。業務上明らかに不要なこと・できないことを強制する「過大な要求」、逆に本人の能力や経験よりも程度の低い仕事を割り当てる「過小な要求」もあります。プライベートなことに過度に立ち入ることもパワハラの1つです。

セクハラ(セクシャルハラスメント)

性的な冗談やからかい、食事やデートに誘うなど、当事者の意に反して行われる性的な言動を指します。

セクハラの結果、減給や解雇など当事者に不利益なことが起きたり、セクハラに気をつけるあまりに仕事に手がつかなくなったりします。

性的な誘いを断った結果昇給されなくなったなど不利益が生じるセクハラを「対価型セクシュアルハラスメント」、性的な言動のために従業員が不快となり仕事の効率が下がるなどの不都合が生じるセクハラを「環境型セクシュアルハラスメント」と言います。

モラハラ(モラルハラスメント)

モラハラは、言葉で人の心を傷つける精神的な暴力のことです。モラハラが日常的に行われれば、精神的にも肉体的にも深刻なダメージとなります。仕事だけでなく家庭でも用いられる言葉です。

マタハラ(マタニティハラスメント)

妊娠・出産にまつわる事項を理由に、当事者に不利益をもたらすことを言います。

例えば妊娠中に切迫流産になり、やむなく休養しなければならないときに上司から「みんなの迷惑だし退職したらどう?」などと言われる......これは妊婦の就労環境を害する嫌がらせなのでマタハラにあたります。

「制度の利用を阻害すること」もマタハラの1つで、例としては、育児休業からの復職後に短時間勤務制度を利用できないといったことが挙げられます。

またマタハラは男性にも当てはまり、配偶者の妊娠を契機にした男性へのハラスメントは俗にパタハラと呼ばれることがあります。そもそも妊娠・出産・育児を理由に従業員に不利益をもたらすことは、「男女雇用機会均等法」や「育児・介護休業法」で禁止されています。仮に表立って妊娠・出産・育児を理由にしていなくてもそれらを契機として不利益なことをすれば、原則として違法と判断されます。

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ハラスメントのない職場とするため

各種ハラスメントが存在する職場は誰にとっても働きにくく、会社に大きな損害を与えることは言うまでもありません。

ただパワハラの例で言うと、パワハラの予防・解決に向けた取り組みを行っている企業で働く従業員は、パワハラによる心身への影響が少なくなることが厚生労働省の調査でわかっています。

また、パワハラ予防・解決に向けた取り組みは、複数実施すると従業員にとって職場環境の改善などの効果を感じやすくなるとの見方もあります。

ハラスメントのない職場とするため、下記のような取り組みを行っていきましょう。

規約の整備・周知

企業として「ハラスメントは禁止」と明示し、周知・実施することが必要です。

具体的には、就業規約に罰則も含めてハラスメント対策について明記すること、パンフレットや冊子の配布でハラスメント撲滅を意識する機会を増やすといったことが挙げられます。

相談窓口の設置

相談窓口を設置し、担当者を決めます。ハラスメントはパワハラ+マタハラといったように複合的に生じることもあるため、相談は一元的に受け付ける体制にすることが肝要です。

妊娠した女性社員に対しては、妊娠中・出産後の働き方を聞くとともに、短時間勤務制度等の会社の制度を利用することのメリット・デメリットを伝えておくとよいでしょう。

管理職や一般社員の職位に関わらず、相談窓口のように人に直接働きかける取り組みだとハラスメント対策の効果は実感できる傾向にあります。

社内研修

一般社員や管理職を対象に、ハラスメントについての講演や研修会を実施するのも1つです。

2016年度(平成28年度)の厚生労働省の調査では特に、管理職を対象にしたパワーハラスメントの講演・研修会が奏功しているとした企業は74.2%に上りました。

管理職が意識改革をすると、職場環境が変わりやすいと言えます。

監視体制の強化

ハラスメントが行われていないか、パトロールすることも必要です。

例えばアンケートを実施して、社内の実態の把握に努めるのも良い方法です。ただ数人の担当者のみで全社員のハラスメントの実態を把握することは難しいかもしれません。

人の目で把握しきれない場合は、ハラスメント対応サービスを取り入れるのも1つの手です。

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ハラスメント対策に活用されるサービス

Microsoft 365の機能の1つである「コミュニケーションコンプライアンス」など、普段の業務でハラスメントが起きていないか監視することを目的にした、ハラスメントを可視化する機能やサービスがあります。


ハラスメント対応サービスは大まかに、下記のような機能を有します。

  • ハラスメントと見なされる言葉や社外秘の資料などをポリシーとして設定
  • 社内のメール・チャットでの発言で該当する情報を感知すれば記録
  • ハラスメントが起きている状況をグラフなどで可視化

ハラスメント対策の担当者や情報セキュリティ担当者は、可視化された情報によって事後の対応を決められます。ハラスメント対策としてこのようなツールの導入を検討するのもよいでしょう。

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まとめ

ハラスメントは、職場環境の悪化をもたらすものです。実態が把握できないとハラスメントはさらに蔓延し、働きづらい環境になるという悪循環に陥ります。

従業員の意識改革が職場環境の改善をもたらすと考え、監視の目を担うサービスも活用しながら、ハラスメントを予防していきましょう。

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