業務用3Dプリンターで使える素材(材料)の種類とは?用途に合わせた選び方
更新日 : 2021年11月06日
昨今、3Dプリンターにおける技術の進歩により、様々な造形物の制作に業務用3Dプリンターを導入する企業が増えています。3Dプリンターによる造形物はプラスチック製というイメージを持つ方も多いかと思いますが、プラスチック以外にも目的や用途に合わせて様々な素材で造形できることをご存知でしょうか。
今回は、業務用3Dプリンターで利用できる素材(材料)の種類と選び方のポイントについてご紹介します。
3Dプリンターとは
3Dプリンターとは、3D CADなどで作成した三次元的データをもとに造形物を作り出す機械です。紙などの平面にインクを出して印刷する一般的なプリンターと違い、3Dプリンターは様々な素材を積み上げて立体物を造形します。
参考:3Dプリンターの基礎知識
家庭用と業務用の違い
3Dプリンターには「家庭用」と「業務用」があります。主な2つの違いとしては、価格やサイズ、精度が挙げられます。
最近は精度が高く低価格で購入できる家庭用3Dプリンターも増えていますが、使用できる素材や造形方式が業務用よりも少なく、造形できる物の大きさも限られてくるため、フィギュア作成やモノ作りなど、個人の趣味で利用する方が多いでしょう。
一方で、業務用3Dプリンターはコストがかかる分、素材や造形方式、機能面において、家庭用よりもあらゆる用途で高精度な造形物を作ることが可能です。
業務用3Dプリンターの活用シーン
業務用3Dプリンターは製造業を中心に、建築や医療など幅広い業界で活用されています。
その場で作りたい分だけ造形物を作ることができるため、試作品作りや小ロット生産に向いています。3Dプリンターの活用によって作業の効率化や製造コストのダウンを図ることができます。
年々精度や技法が進み用途の幅が広がっているため、3Dプリンターの重要度は今後も増していくでしょう。
その他医療関連での活用事例
早期より3Dプリンターが活用されている医療現場といえば、歯科の分野が挙げられます。また介護や介助にともなう補助具などの生成にも、3Dプリンターは使われています。
また人に向けた医療にとどまらず、犬や猫などペットのための義肢の生産にも3Dプリンターが活用されている事例があります。
業務用3Dプリンターの素材(材料)選びのポイント
3Dプリンターは、使用する素材によって造形物の完成度が異なります。素材選びの基本は何を作りたいのか、目的に合わせて選ぶことです。
そこで、業務用3Dプリンターの素材の選び方についてポイントをご紹介します。
3Dプリンター導入のポイント
企業が3Dプリンターを導入する際には、注意したい点がいくつかあります。事前に準備しておくべきことも少なくないため、導入に際してのポイントを押さえておきましょう。
何を作るのかで選ぶ
素材を選ぶ際、何を作るのかによって適した素材は異なります。
形や大きさを見るための試作品であれば素材にこだわる必要がない場合もありますし、実際の製品として作る場合には素材の強度や仕上がりを考慮して選ぶ必要があります。
大きさや強度によって選ぶ
造形物はサイズが大きいほど「反り」や「ゆがみ」が起きやすくなるため、耐久性のある素材でなければ途中でやり直しということもあります。反対に、フィギュアやミニチュアなど細かい造形物を作るのに適した素材もあります。
造形物の大きさや、どのくらいの強度が必要かを考慮して素材を選ぶことは重要です。
仕上がりの精度で選ぶ
造形物は素材によって仕上がりが大きく異なります。
「高精細な造形物を作りたい」「見た目が滑らかな造形物を作りたい」「クリアな仕上がりにしたい」など、目的に合わせた素材を選びましょう。
適切な素材選びによって、求めている仕上がりにより近付けることが可能です。
3Dプリンターは素材選びに失敗すると、想定と異なった造りになってしまうなど本来の目的を達成する事が出来ないといった事態にも繋がります。
そのため素材選びにおいて、特徴などを予め把握しておく事は非常に重要だと言えるでしょう。
3Dプリンターの造形方式も確認
3Dプリンターの造形方式によって、使用できる素材も異なります。ここでは3Dプリンターの様々な造形様式から3つをご紹介します。
FDM/FFF方式(熱溶解積層方式)
FDM/FFF方式は、現在の3Dプリンターにおいて主流の方式です。加熱された樹脂・素材を溶かしながらノズルから押し出し、一筆書きで1層1層積層して造形していきます。
実際の熱可塑性樹脂を使用するため強度・耐熱があり、ABS樹脂やPLA樹脂など多種多様な素材に対応可能です。そのため試作品だけでなく、最終的な製品にも利用できることが大きな特長です。
SLA/DLP方式(光造形方式)
光造形方式は3Dプリンターの造形方式の中で最初に実用化された方式です。
SLA方式は、光硬化樹脂に紫外線レーザーを当てて硬化させて1層1層積層していくことで造形します。一方でDLP方式は、液体樹脂にプロジェクターを通して紫外線を当てて硬化させて造形します。
光造形はABSライク樹脂やPPライク樹脂などの素材に対応可能で、表面が滑らかな造形物を作ることが特長です。しかし、太陽光による劣化や変形が起きやすいため管理方法に注意が必要です。
インクジェット方式
インクジェット方式は素材(材料)を噴射し、1層1層積層していくことで造形する方式です。フルカラーによる造形や複数の性質の素材を混合して造形することで、高精細で再現性の高い造形物を作ることができるのが大きな特長です。ABSライク樹脂や金属、ゴムなど様々な素材に対応可能です。
その他、SLS方式(粉末焼結方式)や粉末固着方式(バインダージェッティング)といった種類があります。
3Dプリンター素材(材料)の種類と特徴
それでは業務用3Dプリンターで利用できる代表的な素材と、それぞれの特徴や用途をご紹介します。
ABSライク樹脂
ABSライク樹脂(レジン)はプラスチック素材の中でも多く利用されている素材です。比較的強度や耐熱性があり、3Dプリンターでは光造形方式によって商品の試作品やミニチュア模型、台座などを制作する事が多くみられます。
光硬化性アクリル樹脂
透過性が高く、クリア系(半透明)な材質が特徴です。中空にて内部構造の可視化や複数部品を勘合する試作品は高い評価を得ており、また高精細なフィギュアからデザインモックアップまで幅広く、最も活用されている材料。紫外線による変色や湿気・熱による劣化が起こる為、長期的に使用する部品には注意が必要です。
ナイロン樹脂
ナイロン樹脂は耐熱性や衝撃性に優れた素材です。粉末焼却方式によって商品の試作品や工業製品、医療モデルを制作する事が可能です。素材の価格が安価である事、先ほどお伝えした耐熱性や衝撃性に優れている事からも業務用3Dプリンターの素材として多く利用されている素材の1つです。
金属
金属は私たちの身近にある素材ですが、3Dプリンターの素材としても重宝され、主に粉末熱焼結方式で利用されます。強度はその素材の特性上、非常に頑丈かつ、耐熱性も高いことから金型や工業製品の最終製品、アクセサリーなどに利用されます。デメリットとしては価格が高価である事が挙げられます。
まとめ
業務用3Dプリンターは、今回ご紹介した他にも様々な素材(材料)があるため、用途に合わせた適切な選び方が重要です。そして、3Dプリンターの使用にはメンテナンスが必要不可欠です。これから3Dプリンターを導入したいと検討中の場合は、導入後のメンテンスやサポートサービスなども併せて検討することをおすすめします。
JBサービスでは、3Dプリンターを検討中のお客様に最適な機器・素材のご提案や導入後の保守・メンテナンスまでトータルサポートさせて頂いていますので、導入の際はぜひお気軽にご相談ください。