コールセンターのBCPで必要な対策とは?策定手順とポイントも解説

更新日 : 2023年02月01日

マスクをして電話対応をする女性

新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの脅威が広がる中で、企業活動におけるリスクマネジメントの重要性が高まっています。

特に連絡の中継拠点であり、非常事態発生時の拠り所となるコールセンターやサポートセンターなどのお問い合せ窓口は、顧客や取引先からさまざまな電話が殺到することが考えられるため、「電話が全くつながらない」という事態は何が何でも避けなければなりません。

今回はコールセンターのBCP対策について見直してみたいと思います。

BCP対策とは

BCP(Business Continuity Plan)対策とは、大きな災害や重大な事故などが発生しても、事業を継続できるようにするための取り組みのことです。気候変動による豪雨被害の増加や感染症の大規模な流行などを背景に、その重要性はますます高まっています。

ここでは、BCPの概要やコールセンターにおけるBCP対策の必要性などを、確認しておきましょう。

BCP=事業継続計画

BCP(Business Continuity Plan)は、事業継続計画を意味します。名前のとおり、大きな災害・事故など企業活動に支障が出るような場面でも影響を最小限に抑えて、速やかに事業を再開・継続できるようにするための計画です。

復旧を速やかに行うための対策を講じるほか、復旧させる事業の優先順位や設備などの代替案などを整理しておく必要があります。

BCPが必要となるシーンとは

BCPが必要となるシーンの代表例は、以下のとおりです。

  • 豪雨や地震などの自然災害
  • 施設などの火災や漏水事故
  • 公共交通機関の大規模な運行停止
  • 感染症のパンデミック
  • マルウェア感染や不正アクセスなどのサイバー攻撃

なぜコールセンターにBCP対策が必要なのか

コールセンターにおいても、BCP対策は欠かせません。その理由は、BCP対策が不十分で業務がすぐに再開できないと、以下のようなリスクがあるからです。

  • 受電不可能な状態が続けば、CS低下、クレーム発生、解約などのリスクがある
  • 少人数での受電となる場合も、取りこぼしや対応品質の低下リスクがある

上記のような状態を放置すれば、提供するサービス・商品や企業自体に対する信頼の失墜につながりかねません。

コールセンターに必要なBCP対策とは?

地震や停電対策だけでは不十分

ウィルス

東日本大震災や2018年北海道胆振東部地震の大停電(ブラックアウト)を教訓に、サーバー周辺の免震化や非常用自家発電機の導入を新たな対策に取り組んだ企業も増えましたが、コールセンターのBCP対策はこれだけでは不十分です。

韓国・ソウルのコールセンター従業員の新型コロナウイルス集団感染に続き、日本でもNTTドコモのコールセンターで感染者集団(クラスター)発生の疑いがあり、運営が停止されたという報道があったように、企業のセンターでは、密閉された室内に多くのオペレーターが在席し、飛沫が飛びやすい環境でありながらも、電話対応時の不便さからマスクの着用もしにくい環境にあったと思われます。

例えマスク着用や換気・消毒を徹底し、感染被害を防げたとしても、学校の休校措置により、出勤できない子育て中のオペレーターが複数発生してしまえば、通常業務の継続は不可能になってしまいます。

安心を確保するための基本は「ディザスタリカバリ」

リスクどんな対策を講じても、100%大丈夫というゼロリスクなビジネス環境など存在しないと考えますが、安心を確保するための基本となるのは「ディザスタリカバリ」です。もしも非常事態が発生したとしても、被害を最小限に抑えるための予防措置や回復措置をどうするのかが一番重要です。

コールセンターの具体的なディザスタリカバリ施策としてまず挙げられるのは分散化でしょう。
「無事な人たちがいる場所で業務を行う」ということも、コールセンター機能を止めない対策の一つです。コールセンターを複数拠点に分散して配置(マルチサイト化)することで、もし非常事態で一拠点が機能できなくなったとしても、すぐに他の拠点で業務を継続することが可能となります。

しかしマルチサイト化するためには、PBX、サーバーなどの設備はもちろんのこと、一人のオペレーターが複数の商品やサービスに精通し、顧客の特性にあわせて業務をこなせるマルチスキルが必要になってきます。また非常事態発生時にスムーズにサイト間切替を行うには、すべての拠点で運用が標準化されていることが前提となります。設備投資や要員確保・育成、運用マニュアルやナレッジの整備などの負担を考えると、大手専門業者でなければ、自社で短期間にこれらすべてを構築するのはかなり難しいでしょう。

アウトソーシングを活用した縮退運用で全面停止を回避

そこで多くの企業が採用している手段が、コールセンター業務の外部委託という方法です。
業種や業態により、フルアウトソーシングが難しい場合でも、止めることのできない重要業務の対応ノウハウを外部のアウトソーサーに置いておくことで、非常事態発生時の全面停止リスクを回避し、縮退運用による事業継続が可能になります。

コールセンターのアウトソーシングについては以下の記事で詳しく解説しています。

コールセンター代行(委託)は価格の安さで決めていい?アウトソーシング先の選び方とは

AIチャットボットの活用も有効手段

AIチャットボットまた昨今、人手不足解消や業務効率化の手段として、AIチャットボットを検討・導入する企業も増えてきていますが、これをBCP対策として利用することも有効です。


AIチャットボットを導入しておくことにより、電話が多くて取りきれない時間帯やオペレータが出勤できない場合、センター自体が閉鎖されてしまった場合でも、パソコンやスマホによる自動応答サービスを継続提供することが可能です。

チャットボットについては以下の記事で詳しく解説しています。

チャットボット(Chatbot)とは?種類や仕組みについての基礎知識

クラウドPBXによる在宅対応(テレワーク)も必要

コールセンターの事業継続性を高める上で有効なのが、在宅での受電対応です。コールセンターが被災し立ち入ることが難しい場合や、交通機関が途絶して出勤ができないケースでも、業務を継続できるからです。

在宅での受電対応をスムーズに行うには、クラウドPBXが非常に役立ちます。クラウドタイプの電話交換機であるクラウドPBXは、大規模な工事不要でコストを抑えて導入できる上に、インターネット経由で接続できるからです。

自宅のパソコンやスマートフォンからでも簡単に使えるので、在宅でも柔軟に対応できます。

テレワークの導入については以下の記事で詳しく解説しています。
テレワーク導入に必要な6つのプロセスとは?
テレワーク導入における課題とは? ~スムーズな導入を実現するために~

コールセンターのBCPを策定するステップ

コールセンターのBCPを策定するには、次の4ステップで進めるとスムーズです。

策定ステップ

①業務の優先順位を決める

②施策を決める

③サービスを選定する

④運用ルールを定める

【BCP策定ステップ①】業務の優先順位を決める

最初に、復旧させる業務の優先順位を決めましょう。すべての業務をまとめて復旧させたり、対策を講じたりするのは、費用・人的リソースなどの面で難しいからです。例えば、顧客のニーズがもっとも高い業務を優先的に復旧させるといった順位付けをすると良いでしょう。

【BCP策定ステップ②】施策を決める

次に、業務を継続させるために必要な施策を決めます。例えば、非常時の連絡体制や業務フローを整備しマニュアル化すると効果的でしょう。また、非常時に備えて普段から訓練を実施しておくと、実際に災害などが発生したときも慌てずに対応できます。

【BCP策定ステップ③】サービスを選定する

施策が決まったら、施策の実施に必要なサービスを選定しましょう。例えば、今回の記事でもご紹介しているAIチャットボットや、クラウドPBXなどが挙げられます。インターネット回線が断絶した場合の代替手段や、停電した場合を想定した自家発電装置など、施策に合わせて検討してみましょう。

【BCP策定ステップ④】運用ルールを定める

実際に災害などが発生した場合の運用ルールは、必ず定めておきましょう。各業務をどのように変更するのか、電話がつながらない場合の業務連絡・安否確認方法などを具体的に定め、全関係者に共有しておくことが大切です。

コールセンターのBCP策定のポイント

コールセンターのBCP策定時に押さえるべきポイントが、2つあります。

  • セキュリティ面に注意
  • 平常時からの備えが吉

セキュリティ面に注意

セキュリティコールセンターでのBCP策定時は、セキュリティ対策を充実させるようにしましょう。コールセンターでは、顧客情報や相談内容など、個人情報や機密性の高い情報を多く扱うからです。

事業が継続できても情報漏洩が発生してしまった、などという事態にならないようセキュリティについてもしっかりと対策しておきましょう。

平常時からの備えが吉

非常時にスムーズに対応するには、平常時から十分な備えをすることが欠かせません。訓練やシミュレーションをしてみて非常時の動きを把握しておく、出社する従業員のための水・食料を備蓄しておく、などの準備を抜かりなく行っておきましょう。

まとめ

今回は非常事態にも重要な役割を果たすコールセンターのBCP対策についてご紹介しました。

平常時から運用の標準化、自動化を進めておくことで、業務効率やコスト削減効果が期待できるだけでなく、アウトソーシングやAIへの移行もしやすくなり、コールセンターのリスクヘッジにもつながります。

JBサービスでは、これらを実現するために、ITIL®ベースの運用コンサルティングや教育サービス、コールセンター受付代行サービス、AIチャットボットサービスなど、さまざまなサービスをご提供しています。

コールセンターやヘルプデスク業務の運用・BCP対策にお悩みのお客様はぜひお気軽にご相談ください。

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